失敗すると「黒字倒産」の可能性も…新規開業の成否を分ける「資金調達」
新規開業後、資金繰りに行き詰まる原因は、必ずしも赤字とは限りません。たとえ黒字であっても倒産する場合があります。黒字倒産に陥る企業には、次のような特徴がみられます。
・売上はあるものの入金が遅く、資金が回らない
・採用や広告を急いだ結果、固定費の負担が重い
・追加投資が必要になっても、次の資金調達が間に合わない
会計上は利益が出ていても、キャッシュ(現金)が不足すれば支払いはできません。開業直後は支出が先行しやすいため、特に「資金管理」が重要になります。
開業時に必要となる資金は、大きく分けて次の3つがあります。
2.運転資金:家賃や人件費など、事業を継続するための資金
3.成長投資資金:広告や採用など、事業を拡大するための資金
資金調達を行う際は、「いくら借りるか」だけでなく、「どの性質の資金を、どの手段で調達するか」を設計することが、事業を安定させるポイントです。
資金提供者の重要な判断材料となる「自己資金」と「事業計画書」
自己資金は、単に多ければいいというものではありませんが、金融機関にとっては重要な評価材料です。金融機関は自己資金の状況から、経営者の覚悟や事業への理解度、資金管理能力などを見極めています。
そのため、自己資金が極端に少ない場合、資金調達のハードルが高くなる傾向があります。
また、資金調達では、相手が金融機関であっても投資家であっても、「事業として筋が通っているか」が必ず問われます。その判断材料となるのが「事業計画書」です。
事業計画書を作成する際には、なるべく難解な表現を避け、次のポイントをわかりやすく整理することが重要です。
・どのように収益を生み出すのか
・資金はなにに使い、いつ必要になるのか
・将来の収支や返済の見通しはどうか
事業計画書は「正解を書くもの」ではなく、自分の事業を説明するための“土台”と捉えると、資金調達の場でも活用しやすくなります。
融資、補助金、クラファン…代表的な「資金調達手段」
ここからは、代表的な資金調達手段をみていきましょう。
1.王道だが奥が深い「金融機関融資」
新規開業時の資金調達において、現在も中心となるのは金融機関からの融資です。特に創業期においては、日本政策金融公庫や制度融資が、現実的かつ有力な選択肢となります。
日本政策金融公庫は創業支援に強みを持ち、民間金融機関は取引実績が積み上がるほど、利用できる融資の選択肢が広がる傾向があります。そのため、創業期はまず公庫融資や制度融資で資金調達の土台を築き、事業が安定してきた段階で民間金融機関からの融資へと広げていく流れが一般的です。
制度融資は、自治体・信用保証協会・金融機関が連携して実行する仕組みであり、金利や返済条件などの面で有利になりやすい一方、手続きが煩雑で、融資実行までに時間を要するケースも少なくありません。そのため、開業スケジュールと照らし合わせながら、「資金がいつ入金されるのか」を事前に把握し、綿密なスケジュール管理を行うことが重要です。
融資条件を検討する際には、金利だけでなく、返済期間や据置期間にも十分注意を払う必要があります。開業直後は売上が安定しにくいため、据置期間を設けることで、当初の資金繰りに余裕を持たせることができます。返済のしやすさ、すなわちキャッシュフローへの影響まで含めて、総合的に判断しましょう。
また、担保や保証についても、単に「避けるべきもの」と捉えるのではなく、事業リスクをどのように分担するかという観点から整理し、慎重に検討する姿勢が求められます。
実務上、融資が通りやすい企業には共通点があります。
・資金使途が明確で、過不足が少ない
・税金・社会保険など基本的な管理意識がある
・数ヵ月先までの資金繰りの見通しを説明できる
「数字が完璧」であること以上に、なぜその資金が必要で、どう返していくのかを説明できることが重視されます。
2.補助金・助成金
補助金や助成金も資金調達として有効な選択肢ですが、「もらえるお金」という認識で進めると資金繰りが崩れます。その理由は下記のとおりです。
・採択率があり、必ず通るとは限らない
・スケジュールが固定されることが多い
・申請・報告などの事務負担が発生する
そのため、補助金は「資金繰りの生命線」ではなく、投資を後押しする手段として位置づけるのが安全です。また、融資と併用する場合は、補助金の入金時期と返済開始時期がズレないよう、資金繰り表で確認することをおすすめします。
3.クラウドファンディング
「クラウドファンディング」は、資金調達と同時にマーケティング効果が期待できる手段です。購入型・寄付型・投資型がありますが、特に購入型は「予約販売」に近い仕組みで、開業直後の認知拡大や売上の確保など、「初速」を生むのに有効な手段といえます。
成功するプロジェクトには、次のような共通点があります。
・魅力が伝わるリターン設計
・発信や告知の計画が具体的
一方で、クラウドファンディングには売上計上のタイミングや手数料の扱い、原価管理など、会計・税務面で注意すべき点もあります。事前に整理しておくことで、後々のトラブルを防ぎやすくなります。

