ついに爆発…妻が“人生で一番激しく怒った”日

だが、1年ほど前、積もり積もった不満が「爆発」した。けんかの原因は思い出せないくらい、ささいなことだったと思う。

リビングで、夫を「あんた」と呼び、「本当に大っ嫌い!」「なんでそんなに人の気持ちが分からないの!」と怒鳴った。人生で一番激しく怒った。

でも、夫は「お母さんが悪い」と考えを曲げなかった。けんかしたことを伝えた娘からは、こう言われた。

「お父さんが変わると期待してるから、お母さんは言っちゃう。でも、無駄だからね」

そうか、私は、夫が変わってくれるとまだ期待してたんだ。じゃあ、それを諦めよう――。何かが心の中で解けるような感じがした。1日の中で夫婦の会話は5分もない。イライラすることもなくなった。

「気持ちを分かって」と渡した小説

夫は「ただの同居人」だ。

昨年、図書館で一冊の本を手に取った。『定年オヤジ改造計画』(垣谷美雨、祥伝社)。定年退職した昭和世代の頭の固い男性の存在に、妻が体調を崩す姿が描かれていた。

夫に勧めると、読み始めた。ただ、自分に都合の悪いことが書いてあると思ったのか、すぐに読み進めるのをやめた。ドラマ化された際も「ドラマを見てね」と声をかけた。

私の気持ちを分かって――。まだどこかで夫に期待していたのかもしれない。今度は見てくれた。そして、夫は言った。

「このドラマは大げさだな」

「ただの同居人」との暮らしは、変わりそうにない。

朝日新聞取材班