「私、こんな人と結婚していたんだ」妻の後悔

外出はたまに買い物にいったり、別の場所に住む子どもたちに会いに行ったりするくらい。

夫には持病があり、1、2ヵ月に1度、病院に行くついでに、近くの元の職場に顔を出した。

働いていたとき、OBが頻繁に職場に来てはおしゃべりをして帰るのを「また来てたよ」「忙しいのに迷惑だ」と言っていたのに。「迷惑なんじゃないの?」と言っても、夫は「長居をしていないから大丈夫だ」の一点張りだった。

それ以外、夫がでかけることはほとんどなかった。そして、テレビを見ている時やたまの外出の際、はやりの格好をしていたり、髪を派手に染めたりする人を見かけると、いつも口にした。

「変な格好だ」「なんでこんな髪の色にしてるんだ」

「見かけで人を判断しちゃ駄目よ」。女性の言葉は響かなかった。

車を運転すると、ぴったり後ろにつく車に怒り、急ブレーキを踏む。「事故になるからやめて!」と助手席から注意すると「分からないやつには、やらないと駄目なんだ」

「私、こんな人と結婚していたんだ」

食い違う会話とけんかの末、夫の人柄に改めて気づき、がっかりしたのは、夫の退職後、1年が過ぎるころだった。

「お母さん、うつ病になったみたいだよ」

「緩衝材」だった子どもたちも家庭を持ったり就職したりして、家を出てしまった。二人の娘に愚痴をこぼすと、「お父さんはそういう人だから、仕方ないよ」。次第に不満を心の奥にしまい込むと、今度は次女に言われた。

「お母さん、ボソボソしゃべって何を言っているか聞こえない。なんか暗い顔をしてる。うつ病になったみたいだよ」

とっさに「お父さんのせいだ」と返した。原因は分かっていても、我慢しなきゃしょうがない。でも、一緒にいたくない。

1日のほとんどの時間を、自分の部屋にこもり、本を読んで過ごすようになった。食事も3食すべてを別々に食べる。夫も自分の部屋で過ごし、お互い自分の部屋からほとんど出ない。

「1日顔を合わせなければ、それで済んじゃう」生活になった。

離婚すれば気持ちは楽になるだろう。でも年金生活で、別れたら生活が大変だ。子どもたちも両親を心配するだろう。夫の最期はみとらないといけない、という思いもある。