厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況」」によると、日本では同居20年以上の「熟年離婚」が、統計のある1947年以降で過去最高を更新し続けているそうです。しかし、離婚は決して簡単ではありません。朝日新聞取材班による著書『ルポ 熟年離婚』(朝日新聞出版)より、「どうしても離婚したい夫」と「どうしても離婚したくない妻」によるドロ沼の離婚劇をみていきましょう。
パチンコにのめり込み、義母には暴言、夫と義父を「夫が建てた二世帯住宅」から追い出した妻。耐えかねた夫が離婚訴訟も、家庭裁判所が「認めない」ワケ【ルポ】
離婚が「認められなかった」理由
判決で、離婚は認められなかった。別居期間が2年程度と短く、婚姻関係が破綻しているとは言い難い、というのが主な理由だった。
そこへきて、不幸も重なった。建設現場で起きた事故をきっかけに従業員の退職が続出し、会社をたたむことになった。
知人のつてで事務の仕事に就いたが、収入は激減した。同居の父は自宅に戻ることなく亡くなった。
5年の別居を経て、2度目の訴訟へ
やりきれない思いは、元妻への恨みをいっそう募らせた。反撃の一手として、住宅ローンの返済を停止した。
返済が滞れば、金融機関が家を競売にかけ、元妻も出て行かざるを得なくなると考えた。さらに別居が5年を経過した時点で弁護士を立て、離婚協議を再開した。
一般的に別居が3〜5年続いていれば、訴訟で離婚が認められやすくなる、と聞いたからだ。2度目の訴訟。元妻は離婚を拒み続けたが、裁判官の心証は変わってきたようにみえた。
「家に住み続けたいなら、買い取るなり、賃料を払うなりしないと」と元妻を諭した。
一転、妻が離婚に応じたワケ
決着は意外な形でついた。
訴訟のさなか、家の屋根が壊れ、屋内が水浸しになるトラブルが発生した。多額の修理費がかかることに嫌気がさしたのか、元妻は手のひらを返して離婚に応じてきた。
金融機関の同意を得て家を売り、そのお金で残りの住宅ローンを完済。弁護士費用の約80万円を払うと、預金はほぼ底をついた。ほかに分け合う財産もなく、年金分割の手続きをして離婚が成立した。
男性「離婚のために家も、金もすべて失った。年金で細々と生きていくだけです」
熟年離婚の財産分与は「家」が争点に
高齢な夫婦ほど、妻が専業主婦の世帯は多くなる。総務省の2022年の労働力調査によると、専業主婦世帯の妻の年齢は「55歳以上」が5割強を占めた。
職業経験が乏しい高齢な女性が離婚し、働こうとしても、給料が高い職に就くことは難しい。賃貸物件で暮らすとなれば、家賃負担はさらに重くのしかかる。
そのため、熟年離婚の財産分与をめぐる協議では「家」が争点になるケースが多い。
専業主婦の妻側は離婚後の収入を計算しにくい分、家にこだわる傾向があるという。
弁護士法人ガーディアン法律事務所の園田由佳弁護士は「家を売って現金にして分けるのではなく、そのまま住み続けることを望む女性が少なくない」と話す。