孫のためなら…快諾した母だったが

年金収入のほか、貯金も1,000万円ほどあることから、孫が困っていては不憫だと二つ返事でOKした節子さん。しかし、一時的なものだと思っていた資金援助の要求は数ヵ月経っても終わらず、徐々にエスカレート。最初は月に5万円だった送金が、半年後にはさまざまな理由をつけて「月10万円以上」が当たり前になっていったのです。

総務省「令和6年家計調査報告」によると、65歳以上の単身無職世帯における家計支出の平均は、実収入から非消費支出(税金、社会保険料など)を差し引いた可処分所得約12万1,000円に対し、消費支出は約14万9,000円。つまり、毎月約2万8,000円の赤字となっています。

1年後…“母の変わり果てた姿”に後悔

そんな日々が続き1年ほど経ったころ、節子さんから「体調を崩した」との連絡がありました。

幸い、大事にはいたらなかったものの、夫婦が交代で数日間身の回りの世話をすることにしたそうです。

「全然食材が入ってないわ。お母さん、ちゃんと食べてるのかしら……」

令子さんが冷蔵庫を確認すると、中身はほぼ空っぽ。節子さんは「もしもなにかあったときのため、預金にはなるべく手をつけたくない」と、自身の生活費を切り詰めながら和也さんへの援助を続けていたのでした。

久しぶりに握った母の手は、昔のふくよかなイメージとは程遠く、とても細く骨ばっています。変わり果てた母親の姿を見て、和也さんは我に返りました。

「このままじゃだめだ」

お金の問題は、世代をまたいで連鎖する

今回の事例の大きな問題点は2つです。ひとつは、子どもの進学において「なんとかなるだろう」と、学費や仕送りの総額を正確に把握しないまま進学先を決めていたこと。

そしてもうひとつは、「年金がある」「持ち家がある」「貯金もそれなりにあるはず」といった“都合の良い思い込み”によって、高齢の親の家計状況を正確に把握せずに、援助を頼んでいたことです。節子さんが体調を崩すまで、和也さんは親に老後資金を切り崩させていることに気づけていませんでした。

お金の問題は、誰かが無理をすればその負担が消えるというわけではありません。ただ、別の世代へと移っていくだけです。高齢の親を頼っても、親自身の生活が立ち行かなくなれば負担はそのまま自分たちに跳ね返ってきますし、子世代へも影響があるでしょう。

お金の問題はこのように、世代をまたいで連鎖していきます。