国税庁「民間給与実態統計調査(令和6年分)」によると、1年を通じて勤務した給与所得者5,137万人のうち、年収1,000万円超はわずか6.2%でした。そんなひと握りの“年収1,000万円プレイヤー”ですが、これを達成したからといって、誰もが歓喜するわけではないようです。55歳会社員の事例をもとに、高年収層が直面しやすい「手取りの悩み」とその対策をみていきましょう。
給与明細を思わず二度見…55歳サラリーマン、部長昇進で“年収1,000万円プレイヤー”の仲間入り→入金額に思わず「なにかの間違いでは」【CFPの助言】
なにかの間違いでは…経理に確認した結果
昇進前の中西さんの年収は、およそ860万円でした。今回の部長昇進により年収が1,000万円を超えたことで、額面では約140万円の増加となります。
中西さんは、この増加額をもとに「140万円を12ヵ月で割れば、月に約12万円。税金や社会保険料で1割程度引かれたとしても、月々の手取りは10万円くらい増えるんじゃないか」と期待していたといいます。
これまでの昇給では収入が増えても手取りの感覚が大きく変わることはなく、「増えた分の多くは手元に残る」という印象を持っていました。そのため、今回も同じような感覚で捉えていたのです。
しかし実際には、年収が1,000万円を超えることで、増加した収入に対してはより高い税率が適用され、健康保険料や住民税の負担も重くなります。具体的には、年収1,000万円と860万円では、年収差は140万円あるものの、税金・社会保険料の増加により可処分所得の差は約92万円(月あたり約7万7,000円)です。
「いくらなんでも引かれすぎでは……」
昇進前に思い描いていた“年収1,000万円の実感”と現実とのギャップに違和感を覚えた中西さんは、たまらず社内の経理担当者に確認しました。
「どうも腑に落ちないんですが……この数字、合ってますかね? なにかの間違いではないですか?」
すると担当者は、淡々と説明します。
「いいえ、合っていますよ。住民税や社会保険料の負担も増えているため、この金額です」
年収が増えたときにやっておきたい「お金の見直し」
中西さんはこれまで、税金について深く考えることがほとんどありませんでした。しかし、年収1,000万円の大台に到達したことで詳細を確認してみると、収入増と同時に負担も大きくなる現実に、改めて不満を抱きます。
なんとか税金を減らす方法はないものか……大学時代からの友人にそれとなく相談したところ、筆者を紹介されたのでした。
面談で経緯を聞いた筆者は、年収が増えることで所得税や住民税、社会保険料の負担がどのように変わるのかについて、その仕組みを説明しました。
そのうえで、これまで中西さんがほとんど節税策を行ってこなかった点を指摘。「iDeCo」を活用した所得控除や「ふるさと納税」による税負担の軽減、条件に該当すれば「医療費控除」も検討できることなど、具体的な対策を提案しました。
「年収が上がったからこそ、こうした制度を知っているかどうかで差が出るんですよ」
その言葉に、中西さんは深く頷きました。数字だけに目を向けるのではなく、税金や制度を含めた全体像を理解することの重要性を改めて実感したようです。
昇進等で年収が増加するタイミングは、お金との向き合い方を見直すきっかけにもなります。「こんなもんか」と落ち込んだり諦めたりするのではなく、一度立ち止まってその仕組みを整理しておくこと、そして自分にできる税金対策を知っておくことが、手取りを増やすための重要なポイントです。
辻本 剛士
神戸・辻本FP合同会社
代表/CFP