AIの普及が招く?深刻化する電力ひっ迫の現実
兒玉:近ごろ「電力不足」という話をよく聞きますし、株式投資でも電力関連銘柄に注目しています。今日は太陽光発電について詳しく聞けると聞いて、楽しみにしてきました。
壬生:まずは「なぜ今、電力がこれほど必要とされているのか」という背景と、世界の再生可能エネルギーの動向についてお話しします。結論からいうと、電力は現在ひっ迫しており、今後さらに需要が増加する見込みです。
―― (司会、以下同):日本の発電量はここ15年ほど横ばいでしたが、ある産業の急成長によって、今後大幅に増加するといわれています。兒玉さん、それはなんだと思いますか?
兒玉:やはり人工知能(AI)でしょうか? 私も毎日ChatGPTを使っています(笑)。
壬生:おっしゃるとおりです。生成AIはスマートフォンなどの端末内ではなく、データセンターで膨大な計算処理を行います。つまり、データセンターが大量の電力を消費しているのです。AIの進化に伴い、データセンターの電力消費量は爆発的に増加すると予測されています。
── 具体的には、どれくらい増えるのでしょう?
壬生:2030年には2020年度比で約2倍、2050年には約5倍の電力が必要になるとされています。これは日本の総発電量に匹敵するほどの規模であり、このまま増え続ければ、私たちの生活にも大きな影響が出かねません。
兒玉:そんなに!? 供給は間に合うのでしょうか……?
壬生:世界各国で対応が急がれています。特にヨーロッパでは、ロシアによるウクライナ侵攻により天然ガスへの依存を見直し、再生可能エネルギーへのシフトが加速しました。
── 電力を大量に使う企業は早くから電源確保に動くわけですね。そしてここで出てきたのが「再生可能エネルギー」です。では、再生可能エネルギー発電量が最も多い国はどこでしょう?
兒玉:環境先進国のイメージがあるドイツですか?
壬生:実は、設備容量では中国が世界一です。国土の広さに加え、国策としての強力な後押しがあります。日本は現在6位ですが、ポテンシャルは高く、今後さらに伸ばしていく必要があります。設備容量では中国が世界一です。国土の広さと開発能力が関係しています。日本は6位ですが、まだまだ伸ばす余地があります。
── 日本が特に注力すべき再生可能エネルギーはなんでしょうか?
壬生:やはり太陽光発電です。風力やバイオマス発電も重要ですが、建設コストや土地の制約、燃料調達などの課題があります。一方、太陽光発電は技術革新によるコスト低下が著しく、日本の環境にも適しています。実際に、近年は太陽光発電の普及が進み、電力供給の安定化に貢献しています。以前ほど「節電」が叫ばれなくなったことからも、その効果がうかがえます。
兒玉:知らない間に、そんなに増えていたんですね。
「導入コストが高い」は昔の話?太陽光発電の最新事情
壬生:次に、太陽光発電の「最新技術とコスト」についてお話しします。
兒玉:正直、「設置コストが高い」「本当に元が取れるの?」というイメージが強いです(笑)。
── 一般的に、太陽光発電のデメリットとして「導入コストが高い」「FIT(固定価格買取制度)の期間制限」「出力抑制」「天候に左右される」などが挙げられますね。
壬生:まずコストですが、技術革新と量産効果で劇的に下がっています。たとえば、太陽光パネル1枚(畳1枚分程度)の値段はいくらくらいだと思いますか?
兒玉:うーん……。一昔前のイメージだと、すごく高そうですが、20万円くらい?
壬生:実は現在、性能にもよりますが1枚あたり約1万8,000円程度から導入可能です。海外製パネルの普及もあり、この10年ほどで価格は4分の1程度になりました。
兒玉:えっ、そんなに安くなっているんですか!? びっくりです!
壬生:パネル自体の性能も向上し、発電効率は約1.5倍になっています。さらに「リパワリング」という技術を使えば、既存のパネルの裏面も活用して発電量を増やすことも可能です。弊社(ブルースカイソーラー)では国内最多の134件のリパワリング実績があります。
兒玉:すごい進化ですね!
壬生:次に「出力抑制」ですが、これは電力の需要と供給のバランスを取るために、電力会社が一時的に発電を制限する仕組みです。九州や東北の一部地域で実施されていますが、解決策として蓄電池の導入が進んでいます。昼間の余剰電力を蓄え、夜間や電力需要が高いときに使うことで、太陽光発電の効率的な運用が可能になります。
── 日本は土地が狭い、という点もよく指摘されます。
壬生:その課題を解決する技術も登場しています。「ペロブスカイト型太陽電池」は、軽くて曲げられるため、従来設置が難しかったビルの壁面などにも設置できます。主原料のヨウ素は日本が産出国であり、コスト面でも有利です。東京都庁にも導入されています。災害時には避難所が自家発電できるようになるなど、防災面でも期待されています。
── 農業との両立も進んでいるそうですね。
壬生:はい。「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」といって、農地の上にパネルを設置し、その下で作物を栽培する取り組みも広がっています。弊社でも、太陽光パネルの下でブドウを栽培し、自社ワイナリーを経営するという試みを行っています。
兒玉:農業収入を得ながら、売電収入も得られるのは魅力的ですね。
壬生:このように、日本独自の技術も活用しながら、太陽光発電の可能性は日々広がっています。
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