すべてではないが…良心的な高齢者施設の“裏の顔”

近年、日本では急速に高齢化が進み、高齢者向け施設の数は年々増加傾向にあります。比較的自立した生活を送る高齢者を対象にした「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」においても、全国的に整備が進んできている状況です。

出典:厚生労働省「高齢者向け住まいの今後の方向性と紹介事業者の役割」 ※1:介護保険3施設及び認知症高齢者グループホームは、「介護サービス施設・事業所調査(10/1時点)【H12・H13】」、「介護給付費等実態調査(10月審査分)【H14~H29】」及び「介護給付費等実態統計(10月審査分) 【H30~】」による。 ※2:介護老人福祉施設は、介護福祉施設サービスと地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護を合算したもの。 ※3:認知症高齢者グループホームは、H12~H16は痴呆対応型共同生活介護、H17~は認知症対応型共同生活介護により表示。(短期利用を除く) ※4:養護老人ホーム・軽費老人ホームは、「社会福祉施設等調査(H30.10/1時点)」による。ただし、H21~H23は調査票の回収率から算出した推計値であり、H24~H30は基本票の数値。(利用者数ではなく定員数) ※5:有料老人ホームは、厚生労働省老健局の調査結果(利用者数ではなく定員数)による。サービス付き高齢者向け住宅を除く。
[図表]高齢者向け住まい・施設の件数 出典:厚生労働省「高齢者向け住まいの今後の方向性と紹介事業者の役割」

しかし、施設の増加とともに、施設側とトラブルになるケースも増えているようです。

サ高住では、入居者の個別のニーズに応じて以下のような追加サービスが設けられています。

・食事の提供

・洗濯・クリーニングサービス

・居室や共用部分の清掃

・通院や買い物などの送迎

・理美容サービス

・買い物代行や日用品の補充

・機能訓練・リハビリ支援

一見便利なようにみえますが、こうしたサービスは別料金であり、利用すると「基本料金」を大きく超えてしまうこともあります。

こうしたトラブルを防ぐには、入居前に施設の口コミや体験入居を通じて実際の雰囲気を確認し、契約時には追加料金などの説明を曖昧なままにしないことが大切です。

万一、追加契約の強要や料金トラブルなどが起きた場合は、早めに消費者ホットラインや各自治体の地域包括支援センターに相談してください。

八木さんの「その後」

八木さんから話を聞いた清司さんは、施設との話し合いを重ねた結果、入居からわずか1年足らずで退去を決めたそうです。

その後は地域包括支援センターの紹介で別の施設へ入居。料金体系が明確で、スタッフの対応も丁寧な施設で、いまでは穏やかな日々を過ごしています。貯金は減ったものの、早めに行動できたおかげで、生活が破綻する前に立て直すことが叶いました。

老後の安心を守るために

今回のような悪質なケースは一部であり、多くの施設は誠実に運営されていることでしょう。ただ、「低料金」「安心」などの言葉に安易に飛びつく前に、契約内容や追加費用をしっかり確認しておく必要があります。

少子高齢化が進む日本において、介護施設はなくてはならない存在です。だからこそ、八木さんの事例を教訓に、冷静な施設選びを行いましょう。

辻本 剛士
神戸・辻本FP合同会社
代表/CFP