親の老人ホーム選びは、将来を左右する重要な決断です。しかし、良かれと思って選んだ施設が、かえって認知症の症状を進行させる「リロケーションダメージ」の原因になることも少なくありません。 本稿では、症状を悪化させる施設に共通する特徴と、逆にご本人の状態を穏やかにする優良な施設の見極め方を、小菅秀樹氏監修の『伝説の相談員が教える幸せになれる老人ホーム探し』(ホーム社)より、具体的なチェックポイントを交えて解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
親の認知症が加速する施設、改善する施設…専門家が教える「後悔しない」老人ホームの選び方
認知症の方に合った老人ホームの選び方
認知症をもつ方が老人ホームに入る場合、まずは「認知症の受け入れ体制があるか」が大きなポイントです。老人ホームの種別ごとに、特徴を解説しますね。
グループホーム
認知症をもつ方が、生活に必要な支援を受けながら共同生活を行う施設です。認知症ケアの専門スタッフが配置されており、1ユニットの定員が9人という少人数制のため、家庭的な雰囲気で過ごせるのが特徴です。認知症の方は環境の変化に敏感で、施設での暮らしに適応するのが難しいことも多いのですが、少人数制だと比較的適応しやすいとされています。
特別養護老人ホーム(特養)
比較的安価に入居できる公的介護施設で、経済的な負担を抑えたい方に向いています。入居対象は原則「要介護3」以上なので、認知症の症状が進んでいる方にとっては頼りになる選択肢です。ただし地域によっては入居待機者が多く、すぐに入居できない場合も。
有料老人ホーム
民間の介護施設で、特養に比べて割高ですが、入居条件が比較的緩やかです。施設ごとに特色が大きく異なり、認知症ケアを充実させている施設もあります。施設の運営方針や提供されるサービスをよく確認することが大切です。
認知症という困りごとを抱え、「とにかく入居さえできれば……」と考えるご家族の気持ちもわかります。ただ、認知症の方は環境の影響を受けやすく、適切でない環境下では症状が進行するおそれもあります。そのため、特に次のポイントに留意して施設を探すといいでしょう。
・入居後の生活は、ご本人が望む生活に近いか
・自宅での習慣や趣味を、可能な範囲で続けられそうか
・スタッフがゆとりをもって入居者に接しているか
・入居者が放置されていないか
・帰宅願望や暴言、暴力などに施設としてどう対応してきたか