親の老人ホーム選びは、将来を左右する重要な決断です。しかし、良かれと思って選んだ施設が、かえって認知症の症状を進行させる「リロケーションダメージ」の原因になることも少なくありません。 本稿では、症状を悪化させる施設に共通する特徴と、逆にご本人の状態を穏やかにする優良な施設の見極め方を、小菅秀樹氏監修の『伝説の相談員が教える幸せになれる老人ホーム探し』(ホーム社)より、具体的なチェックポイントを交えて解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
親の認知症が加速する施設、改善する施設…専門家が教える「後悔しない」老人ホームの選び方
認知症の方が入居するメリット・デメリット
認知症をもつ方が、施設に入ることで認知症の症状が進んでしまうことを「リロケーションダメージ」といいます。これを恐れて、施設への入居に踏み切れないというご家族も少なくありません。
しかし、このリスクは、施設スタッフの対応やご家族のサポートで最小限にできるのです。例えば、短期間老人ホームに宿泊する「ショートステイ」から始めることで、少しずつ環境に慣れていくことができます。また、入居時に壁掛け時計やフォトフレーム、食器など、自宅で愛用していたものを持ち込むことで、不安を和らげることができます。そして、入居後も家族が定期的に訪問することでご本人が安心できるようにし、環境への適応をサポートすることも大切です。
一方で、実は、施設入居が好影響をもたらすことも少なくありません。というのも、施設では生活リズムが整えられ、十分な食事やケアを受けることで身体状態が改善することがあります。認知症の症状は身体状態の悪化が原因の場合もあり、結果として、認知症の症状の進行が緩やかになることがあるのです。また、施設内での交流や活動が刺激となり、精神面や行動に良い変化をもたらすことも。認知症の症状によって施設入居を諦めている方も、まずは一度施設に相談してみてください。ご本人とご家族、双方の負担を軽くして、より良い生活を実現できるはずです。
〈老人ホーム入居時によくある愛用品の持ち込み〉
・写真立て、アルバム
・お気に入りの湯呑、茶碗、箸
・時計、カレンダー、ラジオ
・座布団、ひざ掛け
小菅 秀樹
LIFULL介護
編集長