2024年1月からはじまった新NISAをきっかけに、個人投資家の人口が増加。株式市場に大量の個人マネーが流入しています。市場にとってはプラスである一方、投資初心者のなかには「後悔」している人も少なくないようです。65歳の田中さん(仮名)の事例をみていきましょう。元証券マンの倉橋孝博CFPが解説します。※プライバシー保護のため、個人情報の一部を変更しています。
(※写真はイメージです/PIXTA)
怖かった…新NISAで「170万円」を失った年金月25万円・65歳元サラリーマンの後悔【CFPの助言】
約700万円買った株が大暴落…失意の果てに「狼狽売り」を選択
3月下旬、世界中の株式市場でアメリカの消費停滞とインフレの高止まりを警戒した売り物が増え始めた。そして楽観されていたトランプ関税が4月上旬、突如発表されると、マーケットは阿鼻叫喚の売り物に慌てふためく。
MZも3月21日に高値4,503円をつけると、4月7日には2,688円まで40%を超える大暴落。半年かけて上昇したものが、わずか2週間あまりですべて吐き出しただけでなく、100万円以上の評価損を抱えてしまった。
自分の株が断崖絶壁から転落する様を見てしまった田中は、大きな恐怖に襲われる。パニック時はPCの電源を切り、SNSもシャットアウトすべきだが、田中にはそれができなかった。
4月7日、2,800円で1,800株をすべて売却。狼狽売りによって170万円あまりの損失を出した。投資初心者には大きな傷である。
株は生き物…新NISAは“草花を育てるような意識”で
株は生き物だ。照る日もあれば曇る日もある。山一證券破綻、ITバブル崩壊、アメリカ同時多発テロ、リーマンショック、コロナショック……。経済は数々の危機を乗り越え克服してきた。トランプ関税ショックも、歴史の1ページになる日が来るだろう。
落ちてくるナイフを素手で掴むと大けがをする。乱高下するマーケットで利益を上げることは至難の業だ。朝令暮改のトランプ大統領を恨めしく思うのではなく、いま起こっていることは景気循環の1つと捉えるほうがいい。
トランプ相場で大ケガをした田中だが、どうかリハビリをしたあと、草花を育てるような意識で資産運用の場に戻ってきてほしい。NISAは、植物を育てるには適した土壌なのだから。
倉橋 孝博
株式会社くらはしFP事務所
代表取締役