トランプさまさまだな…短期間で驚きの運用益

このようにして、田中は新NISAの「成長投資枠」を使って株を購入することにした。選んだ銘柄はメガバンクのMZ。地方銀行H株を相続したことで銀行セクターに親近感があり、予想配当利回りも3%を超えていた点に魅力を感じた。

当時は日本銀行の金融政策が引き締め局面だったが、「利息収入が増える銀行にとって、利上げはプラス材料だ!」というSNSの書き込みも気になった。

9月上旬、手始めに3,000円で600株を購入。180万円の投資を行う。それから2ヵ月あまり株価は一進一退を続けたが、米大統領選挙でトランプ前大統領の返り咲きが決まると、マーケットは活況を呈し始めた。

特に、銀行株は金利先高観が強くなったことで騰勢が続き、12月にMZは4,000円手前まで上昇した。60万円近く評価益が出た田中は、まんざらでもない様子。

「MAGA(Make America Great Again)か。トランプさまさまだな……」

さらに田中を喜ばせたのは、12月に支払われた中間配当だ。MZからは3万9,000円を受け取ったが、これは投資額から換算すれば年4.3%の配当利回りになる。もちろんNISA口座なので非課税だ。

気をよくした田中は12月中旬、MZを3,800円で100株追加購入した。成長投資枠の上限まで60万円買い余力が残っていたのである。2024年、田中のNISA口座での投資総額は218万円となった。

「投資がこんなに面白いとは……NISAなら税金もかからないし。成長投資枠は年明けすぐに限度額いっぱいまで買い付けよう」

田中は年末に、ほくそ笑むのだった。

年が明けても相場堅調…「特定口座」でも投資を始めた田中さん

そして、2025年がスタート。1月上旬、田中はMZを4,000円で600株購入し、予定どおりすぐに成長投資枠の上限に達した。幸運にもMZは堅調な値動きを続け、1月24日には日本銀行が政策金利を0.5%に引き上げたこともあり、上昇に弾みがつく。

このころから、田中はPCの前にかじりつき、株価の動きを眺める時間が長くなった。投資経験のある人は理解できると思うが、リアルタイムで自分の株が上昇している様子を見ると高揚感に包まれる。いつまでも上昇が続くような幻想にさえ支配される。

それは、田中も例外ではなかった。事実、MZは3月中旬に4,503円まで上昇。評価益が120万円を超えたときには、もう冷静な判断ができなくなっていた。

「このまま指をくわえて見ているのはもったいないな……。もう少し買おう!」

かくして、特定口座でMZを500株購入。買値は4,300円で、215万円の追加投資だ。NISA口座と特定口座あわせて1,800株、総額673万円購入したことになる。

こうして浮足立つ田中だったが、背後にはすでに危険が迫っていた。マーケットには、次のような格言がある。

――相場は悲観のなかで生まれ、懐疑のなかで育ち、歓喜のなかで終える。

田中は、わずか7ヵ月でそれを知ることになる。