日々の暮らしに欠かせないお金。お小遣いやバイトなど、小さいころから「無駄遣いするな」「お金は大切にしろ」と厳しく育てられてきた人も少なくないでしょう。なかには、いくらお金があっても「減るのが怖い」と使うのをためらってしまう人も……。とある男性の事例をもとに、不安の原因と解決策をみていきましょう。
節約は美徳…60歳で〈貯金残高1億円〉の元大手スーパー店長、定年後1年で「いますぐお金を捨てたいです」のワケ【FPの助言】
いますぐお金を捨てたいくらい…FPに打ち明けた「悲痛な胸の内」
数日後、東山さんはFPのオフィスを訪れ、自身の悲痛な胸の内を打ち明けました。
「私はこれまで、質素・倹約の人生でした。贅沢はせず、趣味もなく、ただお金を貯めることだけを考えて生きてきました。だからですかね、貯金が減ることが怖くてたまらないんです。働こうと思っても続かないし、なにか新しいことをしようとしても、お金が減るのが嫌で結局できない……もうストレスでどうにかなりそうです!」
いままで誰にも言えなかった不安や焦燥感が、次から次へと溢れます。
「できることなら、いますぐにでもお金を捨てたいですよ。残高が減るたびにストレスを感じるくらいなら、いっそのことすべて失ってしまえば楽になるのかなって。まあ、そんなことは絶対にできませんがね」
それを聞いたFPは微笑みながらこう答えました。
「これまで築いてきた大事な資産が目減りすることは、誰しも抵抗を感じるものです。実のところ、東山さんのような相談は意外と多いんですよ」
「多くの人は、お金が尽きる未来に漠然とした恐怖心を抱いています。しかし、具体的にどれくらいのペースで資産が減るのかを把握している人は少ないんです。そこで、将来の資金の推移を可視化することで、東山さんの不安はいくらか軽減できると思います」
90歳時点でいくら残る?シミュレーションで判明した「衝撃の残高」
FPは早速、東山さんの現在の資産状況や今後の年金収入、毎月の生活費、さらには医療費や自宅の修繕費など、突発的な支出の可能性も考慮しながら、90歳までの資金推移をシミュレーションしました。
シミュレーションの結果が出ると、東山さんは画面を見つめながら驚きの表情を浮かべました。
「……え? こんなに残るんですか?」
なんと、このままの生活を続けた場合、低く見積もっても90歳時点で6,000万円もの資金が残ることがわかったのです。