多くの会社員にとって、税金は身近なものではないでしょう。しかし、自社・他社問わず、経営者層と話す際に「法人にかかわる税金」の知識があると、非常に大きな武器となります。そこで今回、多賀谷会計事務所の宮路幸人税理士が、「法人」が支払う税金についての基礎知識を解説します。
知っていると一目置かれる!?…「法人」にかかる税金の種類を税理士が解説 (※写真はイメージです/PIXTA)

個人事業主と法人の税金の違いとは?

まず、個人事業主と会社の社長では、税金を課税される形態が異なります。個人事業主は、売上高から必要経費を差し引いたものが「事業所得」となり、ここから基礎控除などの控除を差し引いた課税所得に対して、所得税が課税されることとなります。

 

一方、会社を設立した場合、会社の利益に対して「法人税」という税金がかかります。会社は、売上から経費を差し引いて法人税の課税所得を求め、ここに法人税などが課せられることとなります。ところが、会社を設立した場合、経営者は社長に就任するわけですが、社長にも「役員報酬」として給料を支払うこととなります。

 

つまり、会社を設立した場合には、今まで事業所得として所得税を課税させられたものが、「給与所得」として経営者に所得税が課税され、法人はその役員報酬などの経費を差し引いた所得に対して、法人税などが課税されることとなります。

法人が支払う税金の種類、支払時期、計算方法は?

法人が支払う代表的な税金は、主なものとして、次の通り11種類ほどあります。法人の税金についての理解をより深めるために、納税のタイミング、計算方法とあわせて、税金の種類を紹介していきます。

 

法人の税金は大きくわけて、以下の3つの納税のタイミングで支払うこととなります。

 

① 事業年度終了日の翌日から2ヵ月以内(6種類

1.法人税     計算方法:課税所得×法人税率

2.地方法人税   計算方法:法人税×地方法人税率

3.法人住民税   計算方法:均等割+法人税割

4.法人事業税   計算方法:課税標準額×法人事業税率

5.特別法人事業税 計算方法:法人事業税×特別法人事業税率

6.消費税     計算方法:売上にかかる消費税額-仕入にかかる消費税額

 

法人の所得には法人税のほか、地方税の法人住民税や法人事業税があり、上記1~5を「法人税等」と一般的に呼びます。その法人税の実行税率は、中小企業の場合、所得の約35%といわれています。例えば、法人税の課税所得が3,000万円の場合、1~5の合計税額は、約1,050万円となります。

 

② 毎月もしくは半年ごと(2種類)

1.源泉所得税

2.住民税(特別徴収)

 

上記1~2とも、従業員に給料を支払う場合、その給料から源泉所得税と住民税を天引きし、原則として、翌月10日までに納めます。従業員が常時10名未満の場合は、申請により、半年に1度の納付とすることが可能です。

 

③ その都度または毎年決められた月(3種類

1.印紙税

2.固定資産税

3.自動車税

 

印紙税は、領収書や契約書などを作成する際、その都度、印紙を添付し、納付することとなります。固定資産税と自動車税は、自治体にもよりますが、毎年5月から6月の間に納付書が送られてきます。固定資産税は年4回に分割して納めます。

「固定資産税」に注目

上記にあげた、法人が支払う税金の種類のなかの「固定資産税」について、実は支払いに係る事務処理等を簡素化する方法があることはご存じでしょうか?

 

法人における固定資産税とは、事業の継続に使われる財産にかかる税金を指し、「土地」「建物」「償却資産」が課税対象です。そのうち「償却資産」とは、所得税や法人税を算出する際、減価償却をしている資産を指し、具体的には、エアコンやプリンターなどの業務用機器、看板、運搬用の大型車両といったものなどが含まれています。

 

これら「償却資産」について、現金で購入するほかに「リース」という選択肢があります。リースとは、リース会社が購入した機械や設備を、法人が毎月一定のリース料金を支払うことで、長期間賃貸することを指します。

 

リース会社は、購入した機械や設備の所有権を持っているため、それらリース物件に損害保険をかけ、リース先の法人がある市区町村に固定資産税を納めることとなります。そのため、本来、法人が現金購入して所有した場合に発生する、減価償却費の計算や、固定資産税の申告・納付、損害保険料の付保・管理、さらには物件の廃棄処分といった事務作業を簡略化できる点が、リースの「メリット」といえるでしょう。

正しい知識を得て、取引先からの信頼を獲得しよう

ここまで、法人にかかる税金の種類について、見ていきました。法人が支払う税金についての知識があると、取引先の経営者層からの信頼も得やすいため、ぜひ正しい理解を深めて、ビジネスの幅をより一層広げていきましょう。

 

 

著者:宮路 幸人

多賀谷会計事務所 税理士/CFP

 

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