2024年7月の調査によると、「生活保護」受給者は約201万人。物価高をはじめ、さまざまな理由から生活保護を利用する人が増加している現状があります。「最低生活費」が保障されることから、生活保護の申請が通れば社会復帰がスムーズになるイメージがあるかもしれませんが、実際には「一刻も早く抜け出したいが、生活保護依存から抜け出せない」という人も少なくないようです。50代単身女性の事例から、生活保護のしくみと抜け出せない理由、改善策について、株式会社FAMOREの山原美起子CFPが解説します。
あまりに大きい「親孝行」の代償…生活保護費〈月11万円〉で暮らす52歳女性が直面する「死ぬまで生活保護」の現実味【FPの助言】
生活保護から脱却できた場合、50代から始められる「マネープラン」とは
就職氷河期や介護などが原因で、働き盛りの時期に資産形成が思うようにいかなかった京子さんですが、仮に、京子さんが生活保護から脱却できた場合、その後のマネープランはどのように立てていけばいいのでしょうか。
1. 今後の生活費を試算する
まずは目先の生活だけでなく、老後まで見越した生活に必要な資金を明確に把握することが大切です。生活費や医療費、介護費用などを見積もり、その金額をもとに資産形成計画を立てるといいでしょう。
2. スキルアップと仕事の安定
収入源確保のために、資格取得をはじめとしたスキルアップを検討することも重要です。たとえばハローワークでは、再就職に向けた「職業訓練プログラム」があります。
京子さんの場合は、介護経験を活かしてホームヘルパーの資格を取得するといった選択肢が考えられるでしょう。自身の経験や得意なことからできる仕事の幅を広げることは、より安定した収入を得る大きな助けになります。
3.早期に貯蓄・投資を開始する
資産形成が不十分な場合でも諦めず、できるだけ早く貯蓄を始め、ある程度貯蓄できたら資産運用を始めることをおすすめします。NISAをはじめ、少額でも税制優遇を受けられる制度を活用するとよいでしょう。
単身女性の生活設計は孤独になりがち…周囲を頼り、心身ともに充実した暮らしへ
誰しも予期しない困難が訪れることがあります。生活保護は、生活困窮者に向けて法的に保障された権利であり、決して恥じるものではありません。本来受給すべき人が受給できていない実態を指摘されていることからも、今後の課題として社会的な誤解や偏見を解消するための取り組みが不可欠です。
また、京子さんのように単身で生活している場合、生活保護を受けながらの生活設計は孤独になりがちです。精神的な安定を得るためには、親族や友人とのつながりを持ち続け、定期的に専門家に相談するなど長期的な視野でコツコツと準備を進めることが、心身ともに充実した生活を手に入れるためのカギといえます。
山原 美起子
株式会社FAMORE
ファイナンシャル・プランナー