2024年7月の調査によると、「生活保護」受給者は約201万人。物価高をはじめ、さまざまな理由から生活保護を利用する人が増加している現状があります。「最低生活費」が保障されることから、生活保護の申請が通れば社会復帰がスムーズになるイメージがあるかもしれませんが、実際には「一刻も早く抜け出したいが、生活保護依存から抜け出せない」という人も少なくないようです。50代単身女性の事例から、生活保護のしくみと抜け出せない理由、改善策について、株式会社FAMOREの山原美起子CFPが解説します。
あまりに大きい「親孝行」の代償…生活保護費〈月11万円〉で暮らす52歳女性が直面する「死ぬまで生活保護」の現実味【FPの助言】
介護生活を終えた京子さんを襲った「さらなる悲劇」
そんな折、京子さんはひどい腹痛に襲われ、職場で倒れてしまいました。
病院に運ばれ診察を受けた結果、「子宮内膜症」を患っていることが判明。「出血がひどいので入院を」という医師に、京子さんは涙を流して訴えます。
「そんな……、これ以上パートを休んだら生活ができません。入院費も払えません」。
すると、病院勤務のケースワーカーから、次のように声をかけられました。「とはいえ、入院しなくては治療に時間がかかりますし、痛くてお辛いでしょう。お困りでしたら、『生活保護を受給する』という選択肢がありますよ」。
「でも私は働いているし、生活保護をもらう資格がないはずです。それに、生活保護をもらってるなんて周囲に知られたら、ずるいって陰口を叩かれてしまう……」。
「生活保護」という言葉に拒絶反応を示す京子さんでしたが、ケースワーカーが丁寧に説明するうち、最終的には「ひとりでどうにかするしかない、できないことは我慢するしかないと思っていたけど、わたし、この制度に頼ってもいいんですね」と納得。自分の置かれている現状を受け入れ、次のように言いました。
「生活保護、申請します。よろしくお願いします」。
生活保護は、条件を満たせば働いていてももらえる
「生活保護制度」は、日本国憲法第25条に保障されている「健康で文化的な最低限度の生活」の保障と、自立の助長を目的に整備されているものです。
生活保護を受給する条件は、厚生労働省が定める「最低生活費」よりも収入が少ないこと。そのため、京子さんのように働いていても、収入が最低生活費を下回っていれば受給することが可能です。この場合、最低生活費から収入を差し引いた差額が保護費として支給されます。
なお、最低生活費は地域や年齢、世帯の人数などによって異なり、毎年厚生労働省が算定します。申請の結果、大阪市内在住、52歳・単身の京子さんには毎月約11万円が支給されることが決まりました。