ソロ活が支持されている若者世代にとって、“おひとりさま”は自分の時間を自由に楽しめるポジティブな印象をもつ言葉です。しかし、年齢を重ねるにつれて、親の介護や自身の老後のことなど、不安が現実味を帯びてきます。50代女性の事例をもとに、おひとりさまの「シビアな現実」とその改善策をみていきましょう。株式会社FAMOREの山原美起子CFPが解説します。
おばあちゃんになってもフラダンスを続けたい…75歳母と同居する年収200万円の“夢見がち”な52歳パート従業員「おひとりさま女性」の厳しすぎる現実に絶句【FPの助言】
増え続ける50代の未婚者
50歳時点の未婚者は1990年代中ごろから急激に増えはじめ、2020(令和2)年の国税調査※1では、男性28.3%、女性17.8%となりました。2025年には女性の未婚者が18.4%まで増加すると予想されており、女性の約「5人に1人」はおひとりさまの状態で老後を迎える可能性があることを示しています※2。
※1 参考:令和2年国勢調査 人口等基本集計結果 結果の概要
※2 参考:内閣府「令和2年度 少子化社会に関する国際意識調査報告書」
「親と同居する中高年」も増加
未婚者の増加に比例して、「親と同居する中高年」の数も増えています。2015年には、40代~50代未婚者の実に50%以上が親と同居しているという調査結果もあります※。
※ 参考:みずほリサーチ&テクノロジーズ「親と同居する中年未婚者の増加と生活上のリスクへの対策」
同居することになる大きな理由としては「経済力」があげられます。同居女性の約60%が、生計維持者は「親」と答えており、介護などでフルタイムで働くことが難しく、親と同居せざるを得ないケースが多いようです。非正規雇用で厚生年金に加入していない場合、将来受け取れる年金も低くなり、子どもが高齢になっても貧困から抜け出せなくなることが問題視されています。
52歳おひとりさま女性の“夢見がち”な将来展望
聡子さんは、父親を早くに亡くし、長年母と2人で生活してきました。52歳になった現在も、母名義の実家で年金暮らしの75歳になる母親と2人暮らしです。
大学を卒業後、正社員として働いていたものの、30歳でアパレル会社を辞め、現在は知人がオーナーの飲食店でパートとして働いています。家には生活費として月6万円を入れていますが、家計は母に任せっきり。特に不自由な様子もないので、母に自分の家の資産状況について詳しく聞いたこともありません。
「婚活をしていたこともあるんですが、残念ながらご縁がなくって……」
そんな聡子さんの趣味は、ダイエット目的で始めたフラダンスです。楽しくて熱心に練習するうちにメキメキと上達し、市民教室の仲間とイベントや大会に出場するようになりました。年収200万円程度のパート代は、フラダンスのレッスンや衣装費、より美しくなるために通いだしたエステなどに消え、貯金する余裕はありません。
たまの母の小言には「財産を残す子どももいないし、なんとかなるわ」と“どこ吹く風”でやり過ごしていた聡子さんですが、ある日イベントの打ち上げで仲間が発した言葉に、ハッとさせられます。
「おばあちゃんになっても、ずっとこのメンバーでフラを続けようね!」
(おばあちゃんになっても? 私、いつまでこの生活を続けられるのかな。もし母がいなくなったら、どうやって生活するんだろう……)
聡子さんが筆者のFP事務所を訪ねたのは、こうしたきっかけからです。