「日本の貧困」は他人事ではない…「生活保護」受給者が増えている

生活保護といえば、メディア等で悪質な不正受給ばかりがクローズアップされたことで、「問題のある制度」として認識されている人も多いのではないでしょうか。「人気芸人の母親が生活保護を受給しているのはおかしい」という十数年前のニュースを記憶している人もいるでしょう。

しかし、「貧困」は深刻な社会問題であり、決して他人事ではありません。

厚生労働省が2024年5月に行った調査によると、生活保護受給者の数は約201万人。その内訳をみると、年金生活の高齢者が半数を占めます
※ 出所:厚生労働省「生活保護受給者数等の推移等」

「働かずに楽をしている」というイメージを持っている人もいるかもしれませんが、実際には「一刻も早く生活保護生活から脱却したい」と願いながら懸命に働いているにもかかわらず、なかなか抜け出せないという人も多いのです。

就職氷河期→介護離職…“生活するだけで精一杯”の50代女性

京子さん(仮名・52歳)は現在、パートをしながら生活保護を受給しています。「就職氷河期と就職活動の時期が重なり、大学卒業後に正社員になれなかったことが悪夢の始まりでした」と京子さんは振り返ります。京子さんは派遣社員としてキャリアをスタートさせました。

その後、細々とした給料で職場を転々としながら働いていた京子さん。低賃金の非正規雇用という立場ではあったものの、贅沢をする習慣もなく、日々の生活に困ることはありませんでした。しかし、まとまった貯蓄はなく、リスクに備えた保険加入などはしていませんでした。

そんな生活を続けていた京子さんですが、大きな問題が発生したのは39歳のときです。父が認知症になり、介護が必要となったのです。

母はすでに他界していたため、高齢者施設に入所させることも考えましたが、「お金もあまりないし、これまでひとりぼっちにさせていたから、せめてもの親孝行になれば」と、京子さんは仕事を辞め、父の介護に専念することを決断しました。

「派遣は半年ごとに契約更新だったんです。いつ切られるかビクビクする生活はやっぱり苦しかったし、同世代とどんどんキャリアや収入の差が開いていく現実から逃げたいという、現実逃避の面も強かったかもしれませんね」。

その後、8年という長い介護生活が終わったとき、京子さんの貯金は底をついていました。その結果、唯一の収入源だった父の年金が途絶えると、あっという間に生活は困窮していきます。長年父につきっきりの生活で、京子さん自身の健康面にも不安があったことから、父の死後もフルタイムで働くことができず、まずは短時間勤務のパートを始めました。しかし、それだけでは生活費を賄うだけの収入を得ることはできません。