帰省のタイミングで親が管理している銀行口座や印鑑の置き場所などを確認しておくといざというときに慌てなくて済みます。本記事では、親のために子ができる財産管理の手伝い方について、ケアマネジャーの田中克典氏の著書『親への小さな恩返し100リスト』(主婦と生活社)より解説します。
預貯金口座を一つにする
預貯金口座を四つ五つ持っている人は少なくありません。目的別に使い分けている人もいますから、親自身がきちんと管理できていれば問題ありません。
しかし、人にもよりますが、親が75歳をすぎたら、口座の整理をすることをおすすめします。少なくとも、年金などの収入が入る口座と、光熱費などが引き落とされる口座は一つにまとめましょう。
入金用と引き落とし用の口座が異なると、引き落とし口座が残高不足になるケースがよくあります。年をとると、Aの残高が少ないからBから移そう、といった対応が難しくなるからです。口座を一つにまとめれば、通帳を見れば家計収支がわかります。「わかりやすい」ことが高齢の親にも、サポートする子にとっても大事なのです。
家計収支を把握することは、親の資産を守る基本です。また、定期預金は、満期になったら自動更新せず、普通預金に移しましょう。現在のような低金利では、定期預金にするメリットがあまりありません。今後、親に代わって子がATMで預金をおろす場合などの利便性を考えると、普通預金のメリットのほうが大きいと思いますね。
こうしたお金の話を、どう親に伝えるかが、実は一番頭を悩ませるところです。「お父さん、いろんな銀行に預けているようだけど、一つにまとめたほうがラクだし、安心だよ……ついでに、定期預金も普通預金に移しておく?」というようなアプローチで、無理強いしないことが大事です。
親も実は、「口座いくつあったかな? まとめなきゃなぁ。定期預金もあったなぁ……」と頭の片隅で気になっているけれど、きっかけがなく、そのままにしているケースもあります。そのきっかけを作ってあげてください。
実印、銀行届出印の置き場所を知っておく
親の財産の確認やさまざまな手続きに必要なのが、実印と印鑑証明、銀行の届出印です。老人ホームの入居の際や、親の死後の手続きにも印鑑は必要になるので、どこに保管しているか、確認しておきましょう。
親は、リスク回避のために、それぞれ別の場所に保管していたり、貸金庫を利用している場合もあります。必ず親に聞いて、目で見て確認してください。
また、金融機関の通帳や証書の保管場所とキャッシュカードの暗証番号も聞いておくことをおすすめします。これも聞き出すタイミングに留意しましょう。前述の口座をまとめる際に一緒に聞くのも一案です。
キャッシュカードの暗証番号は、唐突に親に聞くと、「オレのお金を勝手に引き出すつもりか!」などと誤解を生むケースもあります。根底に親子の信頼関係があることが基本です。そして、暗証番号を共有するのは「もしものときのための備え」なんだと理解してもらうことがポイントです。