偏屈な住人が“上機嫌”になったまさかの事実

この仕事をしてきて、突然訪問したお隣さんにこういう対応をされることは珍しくないのですが、機嫌が悪い人を相手にしても、このまま追い出されては後々困ります。

勇気を奮い起こしてこう言いました。

「お休みのところ申し訳ありません。お宅と依頼者の〇〇様の土地とがこのように接しているので、どうしても立ち会っていただかないといけないのです」と境界線が接していることを、公図を見せながら必死に伝えました。

「面倒くせえなぁ!」

「はい、ご面倒をおかけしますが、後日、この丘の下までご足労いただきたいのです」

「なんだと? お前らがここまで上がって来いよ」

公図によれば、崖の麓から上はすべてがこの家の土地となっています。

そのことを伝え、土地の境界線が崖の下にあることを伝えると、お隣さんの態度が少し軟化しました。

「えっ、この擁壁も俺の土地なの?」

「はい、そうです」

「ふーん」

お隣さんは少し機嫌がよくなった模様。どうやら、崖が丸ごとご自身の土地だとはご存じなかったようです。

「そんなに大きな土地が自分のものだと知らないなんて有り得るのか?」と思われるかもしれませんが、実は同じところに長らくお住まいの家でも、境界をまったくご存じない方はたくさんいます。

お隣さん、気分をよくしたのか、境界の立会いをすることに納得してもらえました。

依頼者さんのもとに戻り、崖の上のお隣さんにも立会いをしてもらう了承を取りつけたこと、また、休日に訪れてしまったせいか、お叱りを受けたことをお伝えしました。ご近所付き合いに支障が出てはいけないので念のため事の次第を伝えたのですが、「ああ、あの人はそういう人なんですよ」と苦笑いしていました。

聞くところによると、崖の上の住人は偏屈で有名な方らしく、怒鳴り散らされたご近所さんは数知れずだそう。依頼者さんですら顔を合わせたくなくて、今回の挨拶にも同行しなかったのでした。