留守で正直ホッとした…ゴミ屋敷住人に「測量のお願い」

誰が見てもひと目で「ヤバい人が住んでいる!」と感じざるを得ない物件があります。例えば、ゴミ屋敷や、外装が特異な家など。こういう家は近くに住むどころか通りかかるのも怖いと感じてしまいます。

ところが、そういう物件の住人とお話しして、意外な素顔に触れたこともあります。

そんなとき、私は「住んでいる物件から受ける印象は、実際の住民の人となりとかけ離れていることもあるのだ」と学びました。

不安というものは「知らないこと」から生まれます。今お住まいのお宅の近くに「ヤバそう」だけどどんな人が住んでいるかわからないので、なんだか怖い、気が休まらない……、そんなふうに感じさせる物件があるかもしれません。

あくまでも私の観測範囲ではありますが、本当に「ヤバい人」というのはごくわずかですほとんどが何か事情を抱えているだけの「まともな人」なのです

まずは、私がそんなふうに思うようになったエピソードを紹介していきましょう。

閑静な住宅街の一画に、そこだけ異様な雰囲気のお宅がありました。

壊れた自転車、古そうな物干し竿、長年使われていなさそうな椅子やテーブル、長年雨ざらしになって使えそうにないベビーカーやボードゲームなど、いろいろな物が庭に山積みになっています。低木や雑草も伸び放題です。

誰もがそこを見れば「ゴミ屋敷」と言ってしまうだろうお宅の典型的な光景でした。

このゴミ屋敷も、依頼者さんの土地の隣地に当たるため、測量の対象です。

テレビに映し出されていたゴミ屋敷の主たちが、「何がゴミだ! 全部使ってるんだよ、ボケ!」「片づけろだと? 誰が迷惑してるのか言ってみろ!」などと怒鳴り散らしている、そんな映像が頭をよぎります。

きっとここに住んでいる人は、異様にキレやすい危険人物なのではないか……。そんなイメージがどうしてもぬぐえませんでした。

依頼者さんに、「お隣に住んでいるのはどんな方なのでしょうか?」と聞いてみましたが、「挨拶程度しか話したことがなくて、よくわからないんですよね」とのお返事で、なんの情報も得られませんでした。

インターフォンを押すまでに少し時間がかかったのは、物を踏まないように注意しながら敷地内を進んだせいもありますが、正直、挨拶をしたくない、いっそのこと逃げ出してしまいたいという心境から、足の進みが遅くなってしまったのもあったかもしれません。

しかし、その日、ゴミ屋敷の住人の方は留守のようでした。いつもは訪問したお宅が留守だと残念に思うのですが、そのときはホッとしている自分がいました。