相続税は、現金だけでなく不動産や株式にもかかります。大切な人が残してくれた財産を有効に使うためにも、税金はなるべく安く抑えたいところです。相続税の節税対策について、相続コーディネイターである曽根 恵子氏の著書『2025年版[図解]身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本』(扶桑社)より、詳しくみていきましょう。
配偶者への不動産相続が“非課税”になる〈特例〉とは?…「相続税」の基本的な節税テクニック5選【相続の専門家が解説】
相続の計算には法定相続人の「数」が重要
相続税の計算は、法定相続人の数がカギです。
たとえば、相続税には基礎控除額がありますが、これは「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算されます。つまり、法定相続人の数が多いほど、基礎控除額が増える計算になります。相続財産の総額が基礎控除額を上回らなければ、相続税自体がかかりません。法定相続人の数が、相続税を抑えるにあたって非常に重要であることがわかるでしょう。
法定相続人を増やすテクニックに、養子縁組をするという方法があります。養子縁組は何人ともできますが、税制においては、実子がいる場合は養子にできるのは1人まで、実子がいない場合は2人までとなります。相続税対策としては、子どもの配偶者や孫を養子にすることが考えられます。
不動産の評価額は時価で計算されない
相続税を計算するとき、現金や株式などは時価で計算されます。一方、土地は時価ではなく、路線価で計算されます。そのため、評価額は公示価格の70〜80%程度となります。建物も固定資産税で評価するため、実際にかかった建築費の50%程度まで評価額が下がります。
つまり、現金で土地や建物などの不動産を買うことによって、相続財産の評価額を減らすことができ、相続税を安く抑えることができるのです。
また、土地や建物を賃貸用にすれば、さらに評価額を抑えることができます。土地は貸家建付地として、借地権割合と借家権割合を引くことができ、建物は借家権割合を引くことができるため、合わせると50%以下に評価額が下がります。
小規模宅地等の特例を利用して評価額を最大“80%”減額できる
亡くなった人から土地や建物を相続したとき、「小規模宅地等の特例」を利用すれば、評価額を最大で80%まで減額することができます。節税対策としては、非常に効果が高い方法です。
小規模宅地等の特例を利用するためには一定の要件があります。相続した宅地が居住用の場合は、面積が330㎡まで、事業用の場合は、面積が400㎡までの範囲内であれば、評価額を80%減額することができます。相続した宅地がアパートや駐車場などの貸付用の場合は、面積が200㎡までは評価額を50%減額することができます。
相続税を大幅に減額できる制度なので、この制度を利用できないかどうか専門家に相談するなどして、間違えないように申告しましょう。
曽根 恵子
株式会社夢相続 代表取締役
相続コーディネイター