相続税は、現金だけでなく不動産や株式にもかかります。大切な人が残してくれた財産を有効に使うためにも、税金はなるべく安く抑えたいところです。相続税の節税対策について、相続コーディネイターである曽根 恵子氏の著書『2025年版[図解]身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本』(扶桑社)より、詳しくみていきましょう。
配偶者への不動産相続が“非課税”になる〈特例〉とは?…「相続税」の基本的な節税テクニック5選【相続の専門家が解説】
相続税を安く抑えるためのテクニック
相続が発生すると、相続税を支払うことになります。現金のほか、家や建物などの不動産、貴金属や宝飾品などの動産も相続財産に含まれるので、現金がほとんどなくても相続税を支払わなければならないという事態も起こりえます。
支払う税金は少ないに越したことはありません。ここでは、相続税を少しでも安く抑えるための基本的なテクニックを紹介していきましょう。
相続税の節税対策としてスタンダードな方法が「生前贈与」です。とはいえ、贈与税という税金もあるので、ただ贈与するだけでは節税にはなりません。なので、贈与税をなるべく安くしながら贈与を行うことで、相続財産を減らしていきます。
そして、もう1つのスタンダードな節税対策が、財産評価額を下げる方法です。たとえば、土地や建物の利用のしかたにより評価額を下げて、相続税を安くしていきます。
長年連れ添った夫婦には贈与の「特例」がある
1年間に贈与した総額が110万円を超えると、贈与税がかかります。しかし、長年連れ添った夫婦の場合、不動産の贈与についての特例があります。
それが、居住用不動産の非課税贈与の特例です。婚姻期間が20年以上の夫婦であれば、配偶者に居住用の不動産またはその購入資金を贈与した場合、2,000万円までは非課税となる特例です。購入資金だけでなく、不動産も対象となる点が大きな特徴です。年間110万円を超えれば贈与税がかかるのですから、この特例を知っているのと知らないのとでは大きな違いが生まれます。
通常の贈与は、相続開始前7年以内に行われたものは相続財産に加算されますが、この特例を利用した贈与はこの制度の対象外という点もメリットです。
死亡保険金は相続税がかからないこともある
亡くなった人が生命保険に加入していた場合、被保険者(故人)と保険契約者が同一の場合は、受取人の死亡保険金は500万円までは非課税となります。ただし、被保険者と契約者が違う場合は所得税、あるいは贈与税がかかるので注意しましょう。
この死亡保険金の非課税枠は、相続税の節税対策に使えます。たとえば、相続人が妻と子ども1人の場合、父親が死亡保険金1,000万円の保険に加入すれば、それぞれに500万円ずつの現金を渡せるだけでなく、全額が非課税になるわけです。
ただし、相続人がそれぞれ500万円を超える死亡保険金を受け取ると、その分は課税対象となります。家族になるべく多くのお金を渡したいと思っているなら、検討してみるといいでしょう。