スマホの普及とともに拡大し、いまなお高い人気を誇るソーシャルゲーム。なぜここまで人々を魅了し続けているのでしょうか。「行動経済学」の視点から読み解いていきましょう。橋本之克氏の著書『世界最先端の研究が教える新事実 行動経済学BEST100』(総合法令出版)より、詳しく解説します。
つい手を伸ばしてしまう…DeNA取締役が語った、人々が「ソーシャルゲーム」から“逃れられない”納得の理由
ソーシャルゲームにハマる第一の理由
ディー・エヌ・エー(DeNA)の取締役でソーシャルゲーム事業本部長の小林賢治氏は、これらをふまえたソーシャルゲームの魅力を、「社会的関係の中で、自身が介入でき、それによる高度なフィードバック(得るもの)があるエンターテインメント」としました※。
※ ファミ通AP(https://app.famitsu.com/20120514_64039/)
ロジェ・カイヨワの4項目に従えば、ソーシャルゲームでは以下四つのフィードバックが得られると言えそうです。
・予想外の発見
・自分以外になる経験
・日頃と違う特殊な体験
これらだけでも十分に魅力的ですが、さらにソーシャルゲームならではの様々なフィードバックがあります。目に見えるものから見えないものまで多数あります。
具体的には、キャラクターの成長、参加チームの勝利、ゲーム上のステージや地位などです。自分が身につけたプレイのテクニックもその一つです。これらはすべてが自分にとって大切な「保有物」となります。こういった「保有物を手放したくないと思う意識」が、ソーシャルゲームにハマる第一の理由です。
人は何かを保有した時に、それに高い価値を感じて手放したくないと感じるようになります。この心理現象を、行動経済学では「保有効果」と呼びます。この法則を検証するために、ダニエル・カーネマンは以下のような「マグカップの実験」を行いました。
まず、実験参加者の学生をAとBの2グループに分け、Aに大学のロゴマーク入りマグカップをプレゼントします。その後すぐ、Aグループに「いくらなら、Bグループにマグカップを売るか?」と尋ね、Bグループには「いくらなら、Aグループからマグカップを買うか?」と尋ねました。
通常のマグカップは6ドルで販売しているものでしたが、結果の平均は「Aグループ:7.12ドルで売る」「Bグループ:2.87ドルで買う」というものでした。
保有者は手に入れたばかりのものなのに、これを手に入れていない人の評価と比べて「2倍以上高い価値がある」と感じたのです。
人間が本当に合理的だとすると、同じものならば、既に持っていても、そうでなくても価値は同じだと考えることでしょう。
橋本 之克
マーケティング&ブランディングディレクター/著述家