生命保険文化センターによると、日本ではおよそ9割の世帯がなんらかの保険に加入しているそうです。一方、商品性をきちんと理解しないまま“なんとなく加入している”という人も少なくありません。なかには、過去の自分の選択を後悔する人も……具体的な事例から詳しくみていきましょう。FP事務所ストラット代表の伊豫田誠氏が解説します。
悔やんでいます…退職金2,000万円・定年直後の60歳男性〈10年前に加入した変額保険〉に“老後の夢”を打ち砕かれ、涙目【FPの助言】
Sさんが気づいた自らの過ち
ここでSさんは、変額保険の高額な死亡保障が過剰であることに気づき、本来であれば、老後に向けて保障額を減らし、その分をもっと効率が良い積み立てに回すことができたかもしれないと考えるようになりました。
結果として、彼は多額の保険料を支払い続けることになり、老後の生活資金を十分に確保できなかったのです。変額保険の特性上、運用成果に左右されるため、安心できるような資産形成も難しくなっていました。
Sさんは、「もっと慎重に考えて保険に加入していたら、柔軟に資金を使うことができたのに」と涙目です。
Sさんの失敗の原因と対処法
Sさんの失敗は、市場リスクの影響、高額な保険料、過剰な死亡保障、専門家への相談不足など、複数の要因に起因しています。
Sさんは変額保険の運用成果に期待していましたが、市場の変動により思ったより運用益が増えませんでした。このリスクを理解せず、老後資金に充てようと考えていたことが問題です。
また、毎月5万円の高額な保険料が退職後の生活資金を圧迫し、老後の資金不足を招きました。さらに、加入当初に設定した高額な死亡保障は、子供たちの自立後には不要となり、満期まで保険内容の見直しができませんでした。
保険は複雑な商品であり、十分な専門家の助言を受けることで、自分に最適なプランを見つけることができます。保険選びには慎重な検討と定期的な見直しが必要であり、自分のライフステージや経済状況に応じた柔軟な対応を心がけましょう。
現状の改善点としては、解約返戻金が払込金額を下回っている期間は損益になるため解約することは避け、もし現金が必要となる場合は他の金融資産から優先して使用していきましょう。
それでも不足が生じる場合は、生命保険の「契約者貸付制度」の活用をおすすめします。これは、解約返戻金の一定範囲内であれば、保険を解約することなく現金を借りることができる制度です。その場合、利息がかかるものの、焦って保険を解約してしまうよりは資金を残せる可能性があるでしょう。