まひろとききょう、対極にいるからこそ築けた関係

――まさにまひろとききょうの関係は「圧強めの先輩と苦笑いしながら聞いてくれる後輩」ですが、ききょうはまひろのどんなところに興味を持ったのだと思いますか?

ウイカ:ききょうはきっと自尊心もあますし、自分の能力も把握していて、自分のできることとできないこと、得手不得手をきっと認識できている。でも、それを表に見せないようにできるタイプというか、ちゃんと空気を読みながらもあえてぶち壊すことを選択できる人間だと私は解釈しています。

「まひろは自分に持っていないものを持っている」というのは、まひろに会った1回目か2回目で気づいて、両極にいるからこそ引き合ったのかなって。きっとまひろもそうで、ききょうのそんなところが「すごいな」と思ったからこそ、苦笑いしつつもききょうに対して、興味深く接しているんだと思います。

似たもの同士だと反発しあうけれど、対極にいるからこそお互いがないものを見て面白がれる。そして大抵の人間がききょうの言動にポカンとしているところを、ききょう自身も「こいつらに言ってもどうせわからない」と卑下していたところに、まひろと出会って「この子はわかってくれている。できる子!」と思って認めた唯一の存在なんだと思います。「やっと自分と対等に話せる友達を見つけた!」みたいな。

性格は対照的だけど、志に向かっていく行動力や博識で教養があるという点は、この時代の女性の中では稀有な共通点でもあります。だから、尊敬もしているし、仲間でいてほしいから足繁く通って一方的に喋るということを続けていたんじゃないかなと思いますね。

『光る君へ』

『光る君へ』は、平安時代中期の貴族社会を舞台に、千年の時を超えるベストセラー『源氏物語』を書き上げた紫式部(まひろ)が主人公。のちの紫式部であるまひろが、藤原道長への思い、そして秘めた情熱とたぐいまれな想像力で「光源氏=光る君」のストーリーを紡いでゆく姿を描く。脚本を手掛けるのは、『セカンドバージン』や『知らなくていいコト』『恋する母たち』などで知られる大石静さんで、今回が2度目の大河ドラマ執筆となる。

THE GOLD 60編集部