役職定年や定年後など、仕事におけるターニングポイントをきっかけに気持ちを切り替え、今後のキャリアを迷いなく進める人は少ないでしょう。会社員時代に管理職等の役職につき、活躍をしていたミドルシニアであるほど、悩みを抱えているかもしれません。自分らしいキャリアづくりには、早いうちから現在の勤め先以外での活動の場を得ておくことも重要で……。本稿では、日本総合研究所創発戦略センタースペシャリストの小島明子氏が、ミドルシニアが一歩踏み出すために必要なことについて解説します。
大手勤務の定年前サラリーマン「副業したい、でも会社が許してくれない」…実は企業側も〈本業以外の活動を重要視〉も、社員に許可を出さない矛盾【キャリアコンサルタントが解説】
ミドルシニアを対象に「越境学習」の機会を
最近では、「越境学習」という言葉も聞くようになりました。越境学習には、副業・兼業の場の提供はもちろんのこと、他社での一時的な業務経験、プロボノ、ビジネススクールへの派遣、ボランティア活動、資格取得支援などまで幅広く含まれます。ホーム(所属組織)からアウェイ(越境先)へ、その後、ホーム(所属組織)へと移動するプロセスを経ることで、新たな気づきや物事の進め方を学び、戻ってきたあと、所属組織のなかで、所属組織におけるイノベーションの着想と実現や、所属組織におけるメンバーのマネジメント等の実行が期待されています 。
『日本の人事部 人事白書 2022』によれば、「越境学習」の取り組みの重要性について、8割近い企業が重要(「重要だ」(37.9%)と「やや重要だ」(40.2%))だと考えていることが示されています。
ただし、実際に行っている「越境学習」の取り組みを聞いたところ、「取り組みを行っていない」(52.7%)が最も多くなっています。「越境学習」の取り組みを行っていない企業の理由としては、「本業がおろそかになる」(36.7%)が最も多く、「上層部が認めてくれない」(24.7%)、「従業員が希望しない」(20.2%)、「予算がない」(18.7%)、「すぐに成果が出ない」(17.6%)と続いています。本業と兼ね合いで社外での活動の場を提供することには、企業が積極的ではない現状が窺えます。
しかし、ミドルシニアについては、役職定年及び定年後再雇用のモチベーション維持や、社外でさまざまな人たちと活動することによる本業への還元、本人のセカンドキャリア支援等、個人と企業双方にとって、メリットは多いといえます。若者への投資はもちろん重要ですが、ミドルシニアが大事にされない会社は、若者から見れば、勤め先での将来のキャリアに不安を感じさせることにもつながります。超高齢社会の日本社会だからこそ、ミドルシニアのキャリア形成支援策の拡充として、越境学習の機会の提供が必要なのではないでしょうか。