頑張っているのに報われない。理解してもらえない。相手の言動に「自分だったらこうするのに」とイライラしてしまう…。これらの原因は、「こうするべき」「こうせねばならない」という“ベキネバ”の考え方を自分や他人に押し付けてしまっていることかもしれません。吉井奈々氏の著書『未熟なまま輝く』(KADOKAWA)より一部を抜粋し、心がラクになるヒントを紹介します。
自分はこんなに頑張っている「のに」、なぜ周囲は理解してくれないのか
自分や他人を〇×でジャッジしてしまう「ベッキーネバーランドの住人」
自分や他の人に「ベキネバ」を押し付けてしまうベッキーネバーランドの住人はどうやって生まれるのでしょうか。
子どもの頃、周りにいた親御さんや先生から言われてきた当たり前・常識・普通というその人たちのマイルール、マイ法律。
これを世の中の当たり前・常識・普通だと思い込むと、立派なベッキーネバーランドの住人になってしまいます。そして、いつも〇×でジャッジ(判断・裁き)をしてしまいます。
待ち合わせは10分前行動をとる「べき」だ! と思っているベキネバさんは、相手が待ち合わせの時間ちょうどに着いたらイライラノニノニします。
「何で待ち合わせギリギリに来るの? 私は遅刻したら迷惑になると思って早く行動してる“のに”。社会人として“常識”じゃない? この人ダメな人だわ」
このように、相手が自分のベキネバ法律を守らなかったら×印を付けて相手をダメな人としてジャッジします。
そして×を付けるのが癖になっている人は「責め癖」があります。
仕事で失敗したとき、
「あの人がもっと丁寧に教えてくれれば失敗しなかったのに」「失敗したのは〇〇さんのせい」といった相手に×を付ける相手責め癖です。
また、相手だけでなく自分にも×を付けてしまいます。
「こんな簡単な仕事もできないなんて、私のバカ、私ってホントダメな人間、必要ない人間なんだ」
といった自分に×を付ける自分責め癖。
さらに、×に振り回されるだけでなく、〇にも振り回されてしまいます。
誰かに褒められたり喜ばれたりしたら〇(安心する)。誰かに怒られたり叱られたりしたら×(不安になる)。
常に誰かの評価を気にしています。常に誰かに〇を付けてもらうことを求めているので、相手の顔色をうかがうのが癖になってしまい、いつも疲れているんです。
世の中には様々な価値観があり、Aさんにとっては〇でも、Bさんにとっては×なんてことも実はよくあります。理不尽なこともあります。環境や組織、時代によっても正解は変わります。
なので、誰から見ても正解の選択って実はないんです。だからこそ、自分の中の正解、自分の中の選択が大切なんです。
例えば「離婚」って「バツイチ」と言われますよね。でも、世の中や周りからは×だとか、恥だとか言われても、その人にとって「幸せになるための選択」ならそれは×ではなく〇な選択でいいんです。「転職」「中退」「休学」もそう。あなたが幸せになるための選択なら、それは〇でいいんです。
自分で自分に〇を付けてあげていいんです。
自分を褒めて労って、癒してあげて
ベッキーネバーランドの住人は基本的に頑張り屋さんで、責任感が強く、真面目な人が多いんです。人に迷惑をかけてはいけない、人の役に立ちたいという優しい心の持ち主が多いんです。
ただ、ベキネバさんはカンチガイされやすいんです。人はベキネバを相手から押し付けられると、攻撃されたように思ってしまいますが、実は攻撃するつもりはないことがほとんど。少しボタンをかけ違えただけ。
特に親から子どもへのコミュニケーションの場合は、愛ゆえにベキネバになってしまう親御さんが多いんです。
「あなたのためを思ってやってあげてる“のに”。何でわかってくれないの!? 何で私は報われないの! 何で一言も感謝してくれないの? ムキー」と可愛さ余って憎さ百倍となり、愛の鬼になってしまうのです。
なので、あなたがノニノニし始めたら「こんな自分はダメだ、何で誰もわかってくれないんだ」と責めたり恨んだりするのではなく、自分のベキネバノニノニを浄化してあげてください。
「私、こんなに頑張ってたんだ。偉いよ、よくやったよ」「私、もう少し力抜いてもいいんだ。焦らなくても大丈夫だよ」と、自分を褒めて、労って、癒してあげてください。そして呪いを解いていきましょう。
「”〇〇するべき”に呪われてたな」「〇〇しないと悪いことが起こると思ってた、嫌われると思ってた」「〇〇しなくてもいいのかも。〇〇してない人もいるよね」「〇〇できてなくても幸せな人いるよね。私も〇〇できなくてもいいのかも」「〇〇できない私を、私が許すよ。手放していいよ」
ゆっくり焦らずベキネバを浄化してあげてください。
吉井 奈々
一般社団法人JCMA代表理事、コミュニケーションと心の専門家
企業や教育機関でコミュニケーション講師として活躍。15年間にわたって約7万人に「相手も自分も大切にするコミュニケーション」を伝えている。出生時に割りあてられた性別は男性だったが、性別適合手術を受けて戸籍を女性に変更し、現在は男性と結婚。
筑波大学や早稲田大学をはじめとする多くの大学で講師を務め、全国200校を超える中学校・高校で、生徒・教員・PTA向けの講演を行っている。NHK・Eテレの教育番組や日本テレビ系列の人生相談番組など、メディア出演も多い。