上場企業に勤める傍ら、自らの経験が役に立てばとブログやX(旧Twitter)で情報発信をしている「いくみ@女性管理職&ブロガー」氏。女性のさらなる社会参画が求められる今、女性管理職も今後増えていくことが考えられます。家庭と出世を両立させるには、どうすればよいのか。いくみ氏の著書『女性管理職が悩んだ時に読む本』(2023年、日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、多くの人が直面する「悩み」について見ていきましょう。
【悩み①】結婚や出産によってキャリアが途切れてしまう…
私の場合は、ライフイベント(結婚、夫の転勤、出産)に伴って、途中に再就職をしたり転職をしたりの「ツギハギだらけ」のキャリアなのですが、同じ勤務先で継続就業していて、結婚、出産というライフイベントに遭遇するという状況もあるでしょう。独身の頃にコツコツ積み上げたキャリアが、仕事人だけじゃなくて家庭人としての立場も加わったことで、途切れ途切れになってしまう。「マミートラック(子どもを持ち働く女性が仕事と子育ての両立はできるものの、昇進や昇格には縁遠いキャリアコースに乗ってしまうこと)」なる言葉も取り沙汰されて、「なにそれ? コースアウトってこと?」と、そんな悔しさと戦うことにもなってしまいます。
■ツギハギでも、とにかく「続けていくこと」が大事
途切れ途切れだって、ツギハギだらけだって、とにかく「続けていくこと」が大事。他人が勝手にコースアウトとかマミートラックなどと決めることじゃなくて、自分が「コース選びの主人公」になればよいのです。時には沿道を走る必要だってあるでしょう。もちろん、職場の理解も重要ですが、何より自分の強い意志で、メイン道路に戻るのを諦めないことです。
私の場合はツギハギ三昧を経験したことで逆に根性が据わって、ある意味反骨心の塊みたいな志が芽生えました。子育てしながら仕事するのって大変だから。でも、やり切ってみる! もしかしたら息子にとっては迷惑だったのかもしれませんが(笑)「一心岩をも通す」の精神です。
また、上司としては、そんな志を持つ部下さんがいるようならば、思いをしっかり受け止めることも大事。外野の雑音を跳ね除けて「この部下さんにさらに成長を遂げてもらうためには?」ということを、自分の経験も伝えつつ周囲を巻き込んでいくように心がけてきました。
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<ワンポイント>
長い人生の階段、ところどころで「踊り場」に遭遇するもの。
ず~っと上り詰めるような歩み方がすべてではありません。踊り場を1つずつこなしてこそ、人としての魅力も増すのだから。そんな考え方もあります。
--------------------------------------------------【悩み②】仕方ないとはいえ、「突然異動」はやはりキツい…
会社員には異動がつきもので、しかも、管理職の場合は特に、ポジションのやり繰り事情が伴うため、突然言い渡されることも多いです。
今の勤務先で18年管理職をやっている私ですが、経営陣ではありませんので、「管理職の配置」については、受け身の立場。直属の上司から「いくみさん、次、ここお願いします」と言われたことが、これまでに4回くらいありました。おそらくその上司のまたその上司の色々な意向があってのことでしょう。
頭では理解しているつもりでも、実際に突然「あっちいけこっちいけ」された側からすればたまりません。
■「自己成長を遂げる景気」と捉える
異動というのは業務指示ですから「嫌です」という訳にもいかず。私の場合は1つの事業を10年以上担当させてもらってから、その後に立て続けに異動が発生したので、最初の異動についてはなかなか心がついていけませんでした。受け入れ難いといっても過言じゃない。当時の上司からは「いくみさんの成長のためにも、新しいチャレンジをどうぞ」みたいな「枕詞」がありましたが、ふん! 何言ってんのよ? 余計なお世話だわ。長年情熱を注いできたかけがえのない事業や愛する部下さんたちから離れなければならないことは、悔しい気持ちでいっぱいでした。
しかし。今思い返してみると、ずっと同じところにいて快適なままではきっと、私はそれ以上に物事を吸収することができなかっただろう。上司が「成長のために」と言っていたこと(おそらく「リップサービス」的に、かもしれませんが)を、不本意でもやってみたら、実際、新たな気付きがあった。なんだか癪な思いもあるけれど(笑)ご指示のおかげです~と心の中で上司に返しておきました。
ちなみに、逆の立場で部下さんに異動を言い渡す時には。その経緯やら背景やら上司の本音やら。包み隠さず伝えることを怠らないようにと心掛けています。
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<ワンポイント>
異動指示、特に、それが突然だと、相当心が折れますよね。「自分がこれまで培ってきたコンフォートゾーン(快適領域)から、一歩踏み出す機会」って捉えるとよいと思います。
--------------------------------------------------【悩み③】容赦なく責任を問われ、ポジションチェンジになることも…
前項の「異動」の件にも通じますが、管理職ポジションは会社から役割付与されたものではあるものの、絶対に約束されたものではありません。
「異動」と一言で言っても、そのまま職位継続となることも多いですが、例えば業績がふるわなかった時など、容赦なく管理職の責任を問い質され、ポジションチェンジの指示もありえます。
■その時の自分にできることを精一杯やるのみ
管理職は一般職と比してより多くの責任を受け持ちますから、それが果たせなかったならば、職位変更を止む無く受け入れる必要もあるでしょう。ただし、各企業には「人事制度」という定めがあって、みだりに社員の職位を変更できない仕組みが保たれているもの。その定めに沿っての自分の処遇変更が必要なのならば、受け入れて次に向かっていけばよいでしょう。
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<ワンポイント>
管理職ポジション、という点だけでなく、世の中に「これが絶対」と約束されたことは何一つない。とにかく「今、ここ」で、その時の自分に精一杯できることをやるのみです。
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いくみ@女性管理職&ブロガー
女性管理職専門家・ビジネス書著者
1962年神奈川県生まれ。会社員歴39年、ワーキングマザー歴31年(2024年6月時点)。中小企業の事務員から始まり、女性管理職に憧れるも結婚を機に退職。出産、子育て、夫の転勤などによって非正規雇用の期間を経て40歳で正社員復帰。現在は上場企業で管理職歴19年。定年再雇用後も管理職を継続しており、部下の延べ人数は200名以上。