ポイントは「内覧」で気づける範囲かどうか

本件の事例は、この裁判例の事例をモチーフにしたものなのですが、この裁判例は、「現状有姿で引渡す」と契約書に書かれていたことにより、瑕疵担保責任の範囲について

「本件売買契約は、「現状有姿」とするものであって、売主は、売買契約の締結に当たって買主の知り得た瑕疵等の不具合については、瑕疵担保責任を負わないことが明らかである」

とした上で、売買契約前に買主の内覧を妨げるような事情が存在しない場合には、売主は、「内覧をしても判明し得なかったような「瑕疵」については責任を負うが、外観、内観上の汚れ、カビ、破損等についてまで損害賠償責任を負うものと解することはできない

と述べました。

以上を前提として、裁判所はこの事例において、買主が主張する瑕疵について、

①給湯器の不完全燃焼による給湯停止

②103号室の漏水

③屋上部分の防水の欠陥

については、その位置や状況、性質等に照らし、内覧によっても直ちに発見、確認することは困難であると推認されるものであって、瑕疵担保責任を負うと判断しました。

他方で、これ以外の

④カビの発生

⑤クロスのたばこのやに等による部屋の汚れ

については、内覧によって判明し得るものであって、「現状有姿」で買い受けた以上、買主自らが対応すべきものというほかはない。

と判断しました。

実務上は、「現状有姿」売買の意味が誤って利用されている例も未だ散見されますので、瑕疵担保責任との関係で注意が必要です。

この記事は2019年7月31日時点の情報に基づいて書かれています(※2024年5月15日再監修済)。

北村 亮典
大江・田中・大宅法律事務所
弁護士