「悪徳リフォーム業者」の手口とは?

「悪徳リフォーム」という言葉を聞いたことはあるでしょうか? 特に、2011年の東日本大震災などを契機に増えた悪質な訪問リフォーム事業のことです。

典型的な手口としては、高齢者などをターゲットにして、無料で点検しますよと伝えた後、屋根裏などに修繕必要な個所があったなどと伝えて、修理代金を請求する流れです。

もちろん、本当に修繕箇所があり、相場通りの費用で修繕してくれればよいのですが、①相場より不当に高額な修繕費を要求する②そもそも修繕する必要がないのになんらかの工事を行う③壊れていないのに、故意に壊して自ら修繕して工事費用を請求する、といった業者もいたため、「悪徳リフォーム業者」と呼ばれています。

さて、この悪徳リフォーム業者ですが、消費者庁だけでなく弁護士会でも相談窓口が設置されるなど、非常に対策が進みました。特に、消費者保護のための「クーリングオフ」制度も利用できるため、特にお金を支払う前であればクーリングオフを請求して、事なきを得られることも多いです。

しかし今回、不動産賃貸業を営む場合には、注意が必要です。クーリングオフという強硬な消費者保護制度が使えない可能性があるからです。

「大家」にはクーリングオフは利用できない?

クーリングオフは、基本的に消費者保護の制度であって、事業者には適用できないとされています。そして、不動産賃貸業は、賃料収入を得るための賃貸事業ですから原則としてクーリングオフをはじめとした消費者契約法の適用がないと考え、備えておくべきなのです。

もっとも、完全にクーリングオフや消費者契約法の適用が除外されているわけではなく、たとえば、1件目の事業用物件の購入や、零細的な個人事業主の場合であって、悪質な勧誘行為などが認められるケースでは、判例上、消費者契約法の適用を図って保護しているケースもあります。もっともそれは例外的なケースです。

そもそも、真偽不明になって裁判を提起して白黒つけなければならない時点で、大家への負担は大きなものになります。不動産賃貸業は、度々「不動産投資」などと呼ばれて、「事業」として認識していない人が少なくないため、改めて注意喚起が必要です。

実際にトラブルが生じたら

事業者である大家は、消費者法やクーリングオフの適用などを受けないため対処が難しいものの、代金を支払った後かどうかで対応方法や対応にかかるコストが大きく変わってきます。

仮にお金を支払う前に「なにかおかしいな……」と感じたら、契約書を締結した後でも、すぐさま建築トラブルに慣れている弁護士などに相談しましょう。金銭を支払う前であって、かつ、工事に着手する前であれば、工事などの請負契約では、民法641条によって解除することができます。

この場合、請負人に発生した「損害」は賠償しなければならないのですが、工事着工前であれば、ほとんど損害が発生したと認定されることは少ないでしょう。したがって、「おかしいと感じたら、お金を払う前に弁護士に相談」と覚えておいて欲しいです。

(注文者による契約の解除)
第641条 請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも存在を賠償して契約の解除をすることができる。

一方、工事が完了してお金を払ってしまったあとでは、下記の理由から対処は難しくなってきます。

① そもそも本当に不要な工事であり悪徳リフォームと呼べるのか否か
② 勝訴したとして、相手企業から損害賠償金を回収できるか否か

という「立証のリスク」と「資金回収のリスク」について、原告側である大家が負担することになってしまうからです。

また、これらの手続きを行うために弁護士費用も発生することにより、工事代金額によっては「コスト倒れ」が見込まれるために、泣き寝入りをせざるを得ないという事態になりかねません。繰り返しになりますが、「怪しいと思ったら、お金を払う前に専門家に相談」と覚えておきましょう。

悪徳リフォーム会社を見極めるポイント

基本的なポイントになりますが、業者のホームページやWebでの評判、契約書がしっかりしたものか否か、などを調べていくほかないかと思います。

訪問リフォーム自体は、高齢で動きづらい人に向けたサービスとして有用な部分もあり、特に不動産会社からの紹介や以前に修繕したことがある会社などで行っている業者も多いので、すべてが悪徳リフォームと構える必要はないと思います。

ただ、いきなりまったく知らないのに飛び込み営業にきた、という場合には、構えて考えたほうがよいかもしれません。このような悪徳リフォームがはびこると、大家としても人間不信になりかねず大変ですし、なにより真面目にリフォーム業を行っている会社も色眼鏡で見られるようなこともあり、双方にとって負担が生じてしまいます。

繰り返しになりますが、「不動産賃貸業は事業」という意識をもって、自身でも情報収集してトラブルに備えていきましょう。

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山村 暢彦
弁護士法人山村法律事務所
代表弁護士

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