味覚を共有すればメタバースで料理をシェアすることも可能
株式会社NTTドコモは宮下芳明研究室とH2L株式会社と連携し、世界初の「相手の感じ方に合わせた味覚を共有する技術」を開発。2024年1月17日から開催されたイベント「docomoOpenHouse’24」で、本技術の紹介をおこないました。この技術は、味覚に関するデータを把握する「センシングデバイス」と、味覚の感度に対する個人差を推定して共有する「人間拡張基盤」、そして味覚を再現する駆動機器「アクチュエーションデバイス」の3つで構成されます。
まず、伝えたい味をセンシングデバイスで分析して数値化。そして人間拡張基盤の独自のアルゴリズムによって、伝えたい相手の味覚に関する25項目のデータをもとにして推定された味覚の感度をデータ化します。
2つのデータから伝えたい味を人間拡張基盤上で相手に合わせてマイニングし、アクチュエーションデバイスで再現することで、相手に「伝えたい味」が伝わる仕組みです。ちなみに、アクチュエーションデバイスで再現される味は、基本の5味(甘味、塩味、酸味、苦味、うま味)を20種類の味覚標準液を使って表現します。
「味覚の共有」が実現することで、新しいコミュニケーションの創造が期待されます。たとえば、メタバースコンテンツにおける味覚の再現。バーチャル体験のなかで友人とスイーツをシェアしたり、リアルタイムで料理を共有したりが可能です。また、映画やアニメコンテンツでは、未来や古代の食事のような、想像のなかでしか存在しなかった料理の味を視聴者へ伝えられるかもしれません。
「食事の時間が毎日の楽しみ」という人も多いように、食事は人間にとってただ栄養を摂取するだけの行為ではありません。味覚センサーは、すでに「味」に関するさまざまな研究に役立てられています。また、エレキソルトのような「味を増強して感じさせる」技術は、今後医療など幅広い分野で活躍するのではないでしょうか。進化を続ける「味覚テック」によって、新しい食文化の創造が実現するかもしれません。
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<著者>
吉田康介
フリーライター