インデックス投資をする人の間で高い人気を誇る株式指数「S&P500」。しかし、投資研究家の児玉一希氏は、「S&P500にも危険な側面がある」といいます。児玉氏の著書『株式投資2年生の教科書』より、詳しく見ていきましょう。
パフォーマンスは「日本株」とそれほど変わらない
とはいえ、日本株に比べればはるかに大きく上がっているS&P500。未だに、30年停滞している日本株とは何かと比較されがちです。
しかし一部の銘柄を除くと、日本株とほとんどパフォーマンスが変わらないことがわかっています。
[図表2]は、S&P500からGAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)と呼ばれる巨大ハイテク企業5社の株を抜いたS&P "495"と日本のTOPIX(トピックス)の比較になります。TOPIXとは、東京証券取引所プライム市場に上場する銘柄を中心に算出されている日本の代表的な株価指標のことです。
両者を比較した[図表2]を見ると、S&P495は日本のTOPIXとほとんどパフォーマンスが変わらないのがわかると思います。ここから読み取れるのは、2010年代のS&P500の安定上昇はGAFAMという巨大ハイテク企業の成長によるところが非常に大きいということです。
実際、2022年11月時点のS&P500の時価総額に占める割合は、この5社だけで30%以上。ここまで割合が大きいと、仮にS&P500に組み入れられている他495社の株価が堅調でも、GAFAM5社が不調に陥った瞬間に引きずられてS&P500も下落しやすくなります。
また、IT産業を中心としたハイテク株は景気がよい時は強さを発揮しますが、やがて景気が過熱してくると金融緩和が終了となり、それに伴う引き締め局面(=景気をあえて悪くする時)では逆に弱くなります。もちろんS&P500に採用される企業は定期的に入れ替えを行っていますので、これから次の10年はアップルやグーグルに代わるような優秀な企業が出てくる可能性は高いです。
ただ、最近の巨大ITプラットフォーマーの発展の仕方を見ると、一部の企業に極端に資金が集まりやすく、それによりS&P500が左右されることも考えられます。そのため、500社に分散されているようで、実はごく少数の銘柄の動向に左右されてしまう危険性があるのです。