「どうすれば人の役に立てるか」を考え続けた先にあるもの

人と人との関係は、お金や名誉や権力を超越したものであり、生きていく“遺産”でもあります。現代社会は非正規雇用や独身、近くに親きょうだいや友人がいないなど、人とのつながりが薄くなり、心細く感じることもあるかもしれません。

私は国内外を転々としながら生きていますが、周囲に親しい友人ができると、やはり心強いもの。なにかとサポートしてもらったり、困ったときに助けてもらったり。

また、仕事も結局のところは、人に声をかけられ、人に助けられ、引き立ててもらい、時間をかけて信頼関係を築くことで生かされてきたことは間違いありません。

ただし、最初から「なにかしてもらおう」と期待してはうまくいかない。「ギブ&テイク」と考えても、期待のズレが生まれてストレスになります。

見返りなんて考えず、「どうすれば人の役に立てるか」を考え続ける習慣があれば、回り回って、どこからか“なにか”が返ってくる仕組みになっているのです。

お金の不安は、ひたすら「ギブ&ギブ&ギブ」を続ける習慣で、吹き飛びます。「この場所でなにができるのか」「社会に対してなにができるのか」と考える習慣のある人は、他人に意識が向けられているので、自分の不安は意識しないものです。

そんな人は「刻石流水(してあげたことはその場で水に流し、してもらった恩は石に刻むほど忘れない)」。そして、自然に“他力”によって生かされるようになるのです。反対に「将来が不安」「年金が少ない」と自分のことばかりでは不安は募るはず。

そもそも人は「もらう満足」よりも「与える満足」により大きな幸せを感じます。

きっと人生の最期に残る満足は与えてもらった満足より、人に与えた満足でしょう。

注意すべきは、けっしてムリをしないこと。「自分ばかり」と恨みがましい気持ちになっては逆効果。あくまでも「やりたいから、やっている」という範囲内で与え続けて。


有川 真由美
作家