関係悪化を招く、夫婦間の「禁句」とは

熟年離婚に至る道筋というと、妻が少しずつ少しずつ我慢を重ねていき、それがある日とうとう耐えきれなくなって爆発したというパターンが多いようです。離婚してしまったら「相続格差」以前の問題ですから、なるべく避けたいものです。

熟年離婚を言い渡された夫とすれば、「いきなりそんなことをいわなくてもいいじゃないか」という気持ちのようですが、妻は何年もずっと我慢を積み上げてきたわけで、「なぜ、わかってくれなかったの」といいたいところでしょう。そのあたりに、夫婦のすれ違いがあるように思います。

やはり大切なのは、親子やきょうだいと同じく、普段からのコミュニケーションです。いつでもなんでもいえる関係にしておけば、大爆発を起こす前に、少しずつガス抜きができます。

もっとも、夫婦の距離感は、親子ともきょうだいとも違います。もとは他人であったことも踏まえて、コミュニケーションには細心の注意が必要かもしれません。

いけないのは、夫婦でお互いに比較してしまうこと。夫から専業主婦の妻に対しての禁句は、例えば「働かなくていいねえ」「昼寝ができていいねえ」など、家で苦労している妻に寄り添わずに、外で働いている自分とくらべてしまう言葉です。

妻から夫に対する禁句は、「あなたは出産の痛みがわからなくていいわね」「黙っていても食事や飲み物が出てきてうらやましいわ」といったもの。

もちろん、ほかの男性や女性と比較するのはもってのほか。ところが、夫婦の距離感を忘れて甘えてしまうのか、ついやってしまいがちです。「妹の旦那は稼ぎがいいらしいわ」というのはもちろん、「隣の旦那さんは、優しくていい人ねえ」というのも、夫婦の普段のコミュニケーションが足りないと、「じゃあ、俺は優しくないのか」と受け取られてしまいます。

夫婦のコミュニケーションのポイントは、それぞれがいいところを持っているのを認めることにあります。そして、男と女とは違うのですから、夫婦の間で比較するのは意味がありません。お互いを、自分の人生の目的に向かって進む際の協力者と考えれば、こんなにいい話はありません。変にライバル心を持つ必要はないのです。



 

天野 隆/税理士
税理士法人レガシィ