建築家とのコラボで「オンリーワン」を実現した収益物件の例 加古川コートハウス

ここ数年、好況が続いた国内の不動産建築マーケット。賃貸住宅の供給戸数も増え続けているが、それに伴い、全体の空室率も上昇傾向にある。本稿では、競争激化が進む賃貸住宅市場で、満室を実現するための秘策として注目を集める、「建築家のデザイン」を取り入れた賃貸物件の魅力を探っていく。日本最大級の建築家ネットワークを作り上げているアーキテクツ・スタジオ・ジャパン(ASJ)株式会社スタジオネットワーク事業本部の石渡治氏に伺った。

収益物件の「価値」が低下してしまう理由とは?

相続対策目的、資産運用目的などで収益物件を建てる場合、一般的には設計から建築までのすべてを丸ごと建築会社に任せてしまうことが多いでしょう。

 

その際に建てられるアパート等の建物は、建築会社が用意している標準規格に沿ったものであり、オーナー様の要望を多少採り入れることは可能ですが、フルカスタマイズすることはできません。そのため、どうしても同じような、似たり寄ったりの建物になってしまい、それが将来の「物件価値の低下原因」となりかねません。

 

アーキテクツ・スタジオ・ジャパン株式会社(ASJ) 
スタジオネットワーク事業本部 
第2営業部 グループリーダー 石渡 治 氏
アーキテクツ・スタジオ・ジャパン株式会社
  スタジオネットワーク事業本部
  第2営業部 グループリーダー 石渡 治 氏

なぜなら、自分が建てた収益物件の周辺エリアに競合物件が建たないという状況は、普通は考えられないからです。年数が経過したとき、何も特徴がない物件であれば、入居者は後からできた新築物件に集中し、古い物件は空室率が上がり、利回りが下がっていくことは自明の理です。

 

最近はオーナー様もよく勉強されていますので、そういった話もご存知です。そこで私たちのところにも「大手の建築会社から提案を受けているが、将来に不安がある」「年数が経っても家賃が下がらない収益物件を作りたい」というご相談でいらっしゃる方が、年々増えてきています。

 

また、面積が狭かったり、形や日当たりが悪かったり、あるいは駅から遠いといった、不利な条件の土地をどう活用すればいいのかというお悩みも、よくお聞きします。

 

いずれにしても、解決のカギとなるのは、ありきたりな物件を作らず、エリアの状況とマッチした個性ある物件を企画することです。それを実現するのが、「建築家デザインによる収益物件」に他なりません。

 

「不利な条件」をいかに「強み」に変えられるのか?

たとえば、私たちが京都で手がけたある物件は、外観デザインを町と調和した和のテイストにしつつ、すべての住戸に「土間」を設けた設計でした。これは、ただ土間というスペースを作ったということではありません。“土間のある暮らし”を提案し、それに魅力を感じて下さる入居者さんに住んでいただきたいという、建築家の提案です。そこに価値を感じない人には意味のない物件ですが、そういう暮らしに価値を感じる方には、まさに他にはない「オンリーワン」の物件になります。

 

私たちは、オーナー様からご相談を受けた際には、まず、「周辺エリアの入居候補者の状況」「競合物件の状況」などを徹底的に調査します。そして、建築家とともに建築予定地の状況、周辺エリアの状況をつぶさに調べ、建築家の発想力を活かした収益物件プランをご提案します。そのときに、たとえば狭小地や傾斜地、駅から遠いといった一般的には不利だとされる条件があったとしても、その不利な条件をいかに強みに変えられるのかが、企画のポイントとなります。

 

別の収益物件の例では、「1階をシャッター付きのガレージにして、愛車と身近にいられるアパート」「遮音性能を高めて、24時間の楽器演奏を可能にしたマンション」なども作らせていただきました。

 

こういった物件も、ガレージや遮音性能に魅力を感じない人にとっては、なんの意味もありませんが、それを重視する人には、貴重な価値を持つ物件であり、たとえ他の物件より家賃が高かったり、駅からの距離が遠かったりしても、そこに住む理由になります。そのため、価値が下がりにくい、つまり「利回りが下がりにくい収益物件」となるのです。

 

「建て替え」より費用の安い「リノベーション」で成功

新築や建て替えだけではなく、場合によってはリノベーションをご提案させていただくこともあります。

 

たとえば、大阪大学近くにあるアパートの例です。ここは2棟(築40年と築30年)が並んでおり、それぞれ6部屋ずつ(計12部屋)あったのですが、部屋の広さが約40平米と中途半端でした。家賃は4万5000円と広さの割には安かったのですが、築年が古いこともあり、2部屋しか埋まっていませんでした。

 

そこでリノベーションを提案しました。まず外観をモダン和風のテイストにし、2棟の間に学生たちが交流できるような中庭的なスペースを設けました。また、部屋割りを変えて、全部で22部屋を取りました。そうしたところ、大阪大学の学生さんにとても好評で、家賃も5万8000円に値上げしたのですが、リノベーションから4年経ったいまも、ずっと満室が続いています。

リノベーション前
リノベーション前
リノベーション後
リノベーション後

 

「建て替え」よりずっと費用の安い「リノベーション」により、部屋数が増えて、家賃が上がり、しかも満室が続いているので、収益性は大きくアップしています。

 

リノベーションの場合、気になるのは融資の点です。この物件は比較的大型だったので、費用見積りは1億円以上でした。耐用年数を過ぎているので、通常だと融資が出ないのですが、私たちのほうで収益性の根拠を示す事業計画書を作成して信用金庫と交渉したところ、それを評価してもらい、25年の融資がつきました。

 

他にも、最近では神戸で、耐用年数を過ぎたマンションのリノベーションに、融資をつけてもらった例もあります。

 

もちろん、100%融資が下りることは保証できませんが、耐用年数を過ぎた古い物件だからといっても、必ず建て替えが必要なわけではないということです。建築家が提案する企画内容によっては、「リノベーション」により、費用を抑えながら収益性を上げることが十分可能です。大手の建築会社さんがそのような企画提案をしてくれることは、あまりないかもしれませんね。

 

難しく考える必要はありません。建築家とまずは気軽に話をしてみたい、という方は、ぜひ一度、我々が全国各地で開催している建築家展にお越しください。

 

アーキテクツ・スタジオ・ジャパン株式会社(ASJ) スタジオネットワーク事業本部
第2営業部 グループリーダー

大学卒業後、大手ハウスメーカーにて3年勤務。2004年、アーキテクツ・スタジオ・ジャパン株式会社へ入社。全国で施主様とスタジオ(施工会社)と「建築家との家づくり」にチャレンジし、多くの家づくりに携わる。初めての住まいづくり(一次取得者)から二世帯住宅やセカンドハウス、土地活用、移住などをサポート。

著者紹介

連載空室ゼロを実現!「建築家デザイン」で建てる賃貸物件の魅力

  • 【第1回】 建築家とのコラボで「オンリーワン」を実現した収益物件の例

取材・文/椎原芳貴
※本インタビューは、2018年4月20日に収録したものです。