6人の専門家が手がけた「相続対策本」・・・執筆の動機とは?④

前回に引き続き、6人の専門家が集結し、1冊の本を書き上げた事例を紹介します。著者それぞれがどのような想いを込めて執筆したのか、インタビュー形式で探ります。第4回目は不動産鑑定士の森田努氏です。※本連載では、毎回ひとつの事例をあげ、今なぜ社長作家が激増しているのか、そして、本を出すことでどんなドラマが生まれるのかを探っていきます。

相続における「不動産鑑定評価」の重要性を伝えたい

相続増税時代に突入し、相続税対象者は昭和33年以来過去最大に。相続人同士の争い、高額な相続税負担、財産の損失など、残された者の人生を揺るがす可能性があるゆえに、頭を悩ませる人も多い。

 

そんな中「かけがえのない財産や人間関係を守り、円満相続を叶える一助となりたい」という想いを抱き、司法書士・不動産鑑定士・税理士・不動産コンサルタント・遺品整理士・事業承継コンサルタントの専門家が立ち上がった。そして、「対策の難しい相続に悩む人」のために「正しい知識」を伝える本を出版した。

 

著者陣へのインタビュー記事、第4回目は不動産鑑定士・森田努氏。不動産鑑定士試験合格後、都内の不動産鑑定事務所において約2年間、主に外資系金融機関に対するバルクセール案件の評価、メガバンク依頼による関連会社間における不動産売買にかかる評価等、年間100件以上の案件を手がける。

 

森田努(不動産鑑定士)

 

 

外資系金融機関やメガバンクを顧客にキャリアを積んだのち、遺言書の作成に向けた個人の不動産鑑定に携わったことでやりがいを感じ、相続案件をメインに手がけるようになる。現在、一般社団法人さいたま幸せ相談センター代表理事、日本相続学会会員研究部会担当。

休日の過ごし方は、午前中は子供のサッカーの練習にパパコーチとして参加。午後から夕方は、夕食に食べたいものを買い出しして料理し、大好きなお酒と一緒に楽しむ。おじさん向けの居酒屋メニューから女子ウケするイタリアンまで、幅広いレパートリーをもつ。

 

――不動産鑑定士とはどのようなお仕事なのですか?

 

不動産鑑定士の主な仕事は、不動産の価格を評価し、「鑑定評価額」として「見える化」することです。簡単に言えば「不動産の価格を○○○円と査定して書類を書くこと」です。国家資格なんですよ。

 

――森田様は本書に書いてある「鑑定評価をもとに遺言書を作成し、争続の不安を解消した事例」をきっかけに相続の分野で不動産鑑定士としての力を活かしたいと考えられるようになったとお伺いしました。相続において、具体的にどのよう関わりがあるのですか?

 

たとえば相続財産の大部分が被相続人の住んでいた自宅で、これをDさんとEさんで相続する場合を考えてみましょう。

 

Dさんは生前に被相続人と同居しており、そのまま住むことを望んだため、自宅不動産はDさんが相続し、Eさんに対して自宅不動産の価格のうち、半分を相続分として金銭で支払うことになりました。

 

ここで、自宅不動産の価格を巡ってDさんとEさんの主張が対立します。例えば、自宅不動産の価格が1億円ならDからEに5000万円が支払われることになりますが、5000万円なら2500万円が支払われることになります。Dにとっては自宅不動産の価格が低い方が、Eにとっては自宅不動産の価格が高い方がそれぞれ有難いのです。

 

このように相続人間で意見が対立した場合には、双方が納得できる適正な価格を把握し、その価格に基づいて両者で交渉をすすめることが必要です。そういった状況のときに、不動産鑑定評価が役に立つのです。

 

――なるほど。不動産鑑定評価は相続問題において、とても重要な役割ですね。

 

実は相続において、遺産分割など不動産鑑定評価が問題解決の道具となる場面は多くあります。しかしながら、不動産鑑定士という職業や不動産鑑定評価があまり社会的に認知されていないため、上手に活用されていないと思います。出版を通じ、不動産に関する紛争解決には不動産鑑定評価が役に立つということを知ってもらい、少しでも相続に関する争いを減らすことができればと思い、執筆を決意しました。

 

 

――執筆中、一番大変だったことは何ですか?

 

我々専門資格者はとかく専門用語を使いたがります。専門用語以外の日常的な言葉で表現すると誤解を招いてしまうことがあるからです。しかし、専門用語は分かりづらく、硬い印象を与えてしまいます。共著者の佐藤さんに下書きを読んでいただいたときに、ももっと柔らかい表現のほうがいいとアドバイスを受けました。

 

そこで、できるだけ多くの皆さんに読んでいただくために、それらの専門用語を分かりやすい表現に変えました。分かりやすく、かつ、正確な表現をすることには苦労しました。

 

――本書では、争続を未然に防ぎ、円満な相続をするために考えるべきことが、豊富な事例とともにわかりやすく解説してあります。不動産をお持ちで相続について悩んでいる方にとって、必読の章だと感じます。最後に改めて読者に伝えたいメッセージをお願いします。

 

ありがとうございます。相続における争いの多くは、日々のコミュニケーションの欠如から生まれるものだと思います。日々溜まっていた想いや、不満が相続をきっかけに噴出するケースが多くあります。

 

争いの回避には子供のこと、両親のこと、生活のこと、将来のことなどをお盆や年末年始など、家族が集まったときに少しずつでも本音で話せるような関係作りが大切だと思います。今はテレビ電話もありますし、まずは、家族が顔を合わせる機会を増やすということから始めてみてはいかがでしょうか。

 

 

佐藤良久、近藤俊之、幾島光子、石川宗徳、森田努、島根猛 著

『円満相続を叶える正しい知識』

 

 

「相続登記と遺言を行なうメリットってなんだろう?」
「相続した不動産、売るべき?売らないべき?」
「信頼できる税理士の見極め方を知りたい」
「不動産価格を巡って意見が分かれてしまった」
「倉から掛け軸を発見。誰に相談すればいい?」
「会社を任せられる後継者がいない」

「対策が難しい相続」に悩む人は、決して少なくありません。本書では、司法書士・不動産コンサルタント・税理士・不動産鑑定士・遺品整理士・事業承継コンサルタントの6名が、事例と共に相続に関する悩み解説。大切な資産と人間関係の守り方を教えます。

 

幻冬舎ルネッサンス新社 代表取締役社長

企画編集室・室長を経て現職。代表取締役となった現在も、毎月10冊以上の書籍編集に携わる。手がけるジャンルはノウハウ書、旅行記、写真集、絵本など幅広いが、特に得意としているのは小説と自叙伝。著者の出版目的を満たすことを重要視し、書き手と細かく議論を重ねる編集スタイルが特徴。これまで多数の重版実績を持つ。

著者紹介

連載いま激増する「社長作家」――その実像を探る