50年代、「アジアの優等生」と呼ばれたが…
フィリピンは1950年代、日本に次ぐアジア第2位の経済成長率を誇り、「アジアの優等生」と呼ばれ、東南アジアでも将来性豊かな、有数の成長国と言われる時代がありました。その後、悪名高き独裁体制を築き、政治腐敗の代名詞ともなったマルコス政権時代に入り、以降「アジアの病人」と呼ばれるほど深刻な長期低迷期(1960~90年代)を過ごしました。この長期低迷の最大の原因が、政治腐敗とそこから生まれた貧困問題でした。
かつては「スモーキーマウンテン」と呼ばれるゴミの山で生活する子どもの様子が頻繁にテレビで紹介されていたので、ご記憶されている方も多いのではないでしょうか。この60~90年代のフィリピンでは一部の特権階級が私腹を肥やす一方、超貧困層の生活改善は一向に進まず、貧困問題と政治腐敗は社会問題となっていました。マルコス独裁政権が打破された後も、汚職腐敗のスキャンダルは後を絶たず、フィリピンの成長の足かせとなり続けてきました。
この結果、フィリピンは他のアセアン諸国と比較しても遅れを取ることとなるのですが、前大統領で2010~2016年まで任期を務めたベニグノ・アキノ大統領が公約に掲げた「腐敗撲滅とクリーン政治」は賞賛に値する結果を残し、政治の透明性の確保と財政健全化、さらに貧困問題も解決に向かいました。また、在任期間中の経済成長率は平均で6.13%と非常に高い数値を示し、国の発展に大きな足跡を残しました。
お騒がせのドゥテルテ大統領だが、支持率は極めて高い
現在は、アキノ大統領の後任として、何かと話題を振りまくお騒がせ大統領ドゥテルテ大統領が就任し、戦後70年の同盟関係にあるアメリカとの関係改善や中国、ロシアへの急接近など外交面での不安を覗かせ、また国内では麻薬戦争と銘打ち、超法規的殺人も厭わぬ姿勢で臨む、違法薬物とそれにまつわる汚職撲滅作戦を実行し、国内外で大きな論争を巻き起こしています。
この新政権については筆者著書『1日5分、10万円からはじめるフィリピン株式投資』にて詳しく解説していますが、フィリピン国内では70%を超える高い支持率を誇り、フィリピンの成長を推し進める真のリーダーとして評価する声も大きく、経済成長率も2016年第3四半期までで7.03%とインドに次ぐアジア2位と好調を持続しています。