本連載では、中小企業が「長期インターンシップ」を取り入れることにより、新たな事業を展開した実例を紹介していきます。

社内の負担を増やすことなく事業予算を増額できる!?

実は、世の中には"使えるお金"がたくさんあります。使えるお金とは、国や行政が出す補助金や助成金のこと。筆者の会社がプロジェクトを進めるときにはまず、「補助金や助成金が取れるかどうか」で判断します。それらを使えば、人件費などのコストはペイできる。この仕組みを利用して、自転車操業だった零細企業が一気に利益を生み出す成長企業へと変身を遂げたのです。

 

今、中小零細企業がやるべきことは補助金などの制度をうまく活用することです。補助金や助成金を獲得するには、細かい手続きや申請書の提出が必要になります。要項は長く、解釈するのに頭を使わなくてはいけません。承認が下りるまで時間もかかるし、手間もかかる。ただ、ある意味ではそこが参入障壁になっているのです。

 

申請すれば使えるお金があるのに、その情報を知らない。知っていても手続きに時間を割く余裕がない。ほとんどの中小企業がそういった理由で、有効活用できるかもしれないお金を取れていないのです。

 

とはいえ、実際には人手不足の中小企業ではそこまで手が回らないのが現状でしょう。そこで活躍するのが、長期インターンシップの学生たち。書類の手続きや助成金制度の申請を学生に一切任せることで、社内の負担を増やすことなく予算が増える。

 

私の会社では中小企業庁や支援団体のホームページで公募が出ると、「土曜会議」で学生たちと相談します。彼らがやるといえば動き出し、現在抱えている案件に集中したければ取りに行かないという決断をする。申請を通すノウハウを蓄積しているので、通すためにはどうするかではなく、通して何ができるのか、を詰めていくのです。

 

先に企画書を出し、補助金を獲得できてからプロジェクト化するパターンもあれば、最初からプロジェクトありきで「この内容ならこの補助金が取れそうだ」と狙いを定めて企画を出すケースもあります。

 

代表的なものは、2012年度補正予算から始まった「ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金」です。製造業に携わる中小企業に対して、試作品の開発や設備投資などを支援する補助金で「ものづくり補助金」と呼ばれています。

通常はコンサルタントに依頼するところだが・・・

一般的な企業では、補助金の獲得を目指すときには銀行からアドバイザーを呼んだり、コンサルタントを招いたり、ねじり鉢巻きをして必死で企画書を作成しています。そして最後には、銀行が保証の判子を押して申請書を出すという流れになっています。

 

もちろんそこには成功報酬、失敗しても手数料が発生する。私の会社は最初から最後まで自分たちで書類を作成するので、〝銀行の色〟がついていません。もちろん、手数料を払う必要もない。

 

全国的に見て、こういったスタイルの企業は少ないでしょう。自力で申請するためには時間もかかるし文章力が必要です。補助金は必ず出るとは限らないわけなので、国の政策や業界の動向、役所の担当者にヒアリングをして情報を集めなければなりません。

 

普通の会社ならば、コンサルタントに任せる部分まで学生たちに動いてもらう。申請手続きは数を重ねるうちに文章構成力などのスキルが身につきます。そうして蓄積されたノウハウに新しいアイデアを合わせて、補助金を獲得するのです。

 

2014年、15年には2年連続で申請を通すことに成功しました。結果的には2つのプロジェクトを抱えることになり、同時進行が難しかったので辞退しましたが、申請書が通ったという実績に価値を置いています。2回目を取ればコツが摑める。補助金が出るか出ないかが、感覚的に分かるようになりました。

 

中小企業への支援は追い風の傾向にあります。2016年7月には「中小企業等経営強化法」が施行されました。

 

中小企業・小規模事業者・中堅企業を対象に、①各事業所管大臣による事業分野別指針の策定や、②中小企業・小規模事業者などへの固定資産税の軽減や金融支援などの特例措置を規定しています。少しでもコストを下げ、利益を出したいならばこういった制度を使わない手はないでしょう。

本連載は、2016年11月12日刊行の書籍『事業拡大を実現する中小企業のための「長期インターン」活用戦略』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

事業拡大を実現する中小企業のための「長期インターン」活用戦略

事業拡大を実現する中小企業のための「長期インターン」活用戦略

佐藤 均

幻冬舎メディアコンサルティング

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