前回は、学生のアイデアが生み出す新しい事業について取り上げました。今回は、激化する人材争奪戦の実際を見ていきます。

大手企業が採用枠を増やし、中小企業の採用が困難に

近年、中小企業の人材不足は深刻さを増しています。

 

2015年の日本商工会議所の調べによると、人手不足を感じている中小企業は50.1%にのぼることが分かっています。また、2015年の中小企業白書によると、中小企業・小規模事業者が人材を「十分確保できている」と回答したのはわずか6.7%。その一方で人材を「十分に確保できていない」と回答した企業の理由を見ると「人材の応募がないため」が56.8%と最も多く、「人材の応募はあるが、よい人材がいないため」が39.9%で続いています。

 

その背景には、アベノミクス効果などにより、輸出産業を中心に国内の景気が回復したことにあります。それに伴い、企業はそれまで抑えていた新入社員の採用を積極的に行うようになりました。厚生労働省の調査によると、2016年6月時点の有効求人倍率は1.37倍。実に24年10カ月ぶりの高水準となり、採用市場は売り手に転じました。

 

[図表1]有効求人倍率の推移

参照:厚生労働省 「一般職業紹介状況(2016年7月分)」より作図
参照:厚生労働省 「一般職業紹介状況(2016年7月分)」より作図

 

この採用市場の競争激化により、中小企業の採用活動は苦戦を強いられているのです。マイナビの「2017年卒マイナビ大学生就職意識調査」によると、就職活動中の学生に大手企業志向か中堅.中小企業志向かを尋ねるアンケートで「絶対に大手企業がよい」と「自分のやりたい仕事ができるのであれば大手企業がよい」との回答は48.4%となり、前年の調査と比べると5.5ポイント高くなっています。つまり、大手が採用枠を増やしていることに加え、学生もまた大手を希望していることから、学生たちの目が中小企業に向けられなくなっているのです。

 

[図表2]中小企業・小規模事業者の人材確保状況

[図表3]人材を確保できない理由

参照:中小企業庁 「2015年版中小企業白書」より作図
参照:中小企業庁 「2015年版中小企業白書」より作図

合同説明会では「話を聞きに来る」学生すらいない!?

もちろん、私の会社も中小企業なので、多くの中小企業同様、人材の確保には苦労をしていました。新卒の学生を集めるための合同説明会に参加しても、学生から見向きもされません。学生が集まるのはネームバリューのある企業やベンチャー企業、若い社員が多くて新規事業にチャレンジできる会社ばかり。せっかく経費を使って参加しても、私の会社のブースには閑古鳥が鳴いている状態。

 

採用どころか、説明を聞きに来てくれる学生すらいないのです。会場を見渡すと、中小企業の多くはどこも私の会社と似たような状況です。

 

通常業務で私以外の社員は手一杯。合同説明会にはいつも私たった一人で参加していました。どんなに夢やビジョンを持っていても、それを具現化してくれる協力者がいない―。中小企業の経営者は孤立しているのだと身にしみて感じました。

 

2020年の東京オリンピック開催を控えた今、ますます日本経済は右肩上がりになることが予想されています。これからも大手企業の人材囲い込みは止まりません。これからも、〝人材争奪戦〟はさらに激しくなっていくのです。

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    本連載は、2016年11月12日刊行の書籍『事業拡大を実現する中小企業のための「長期インターン」活用戦略』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    佐藤 均

    幻冬舎メディアコンサルティング

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