前回に引き続き、激化する人材争奪戦の最新事情を見ていきます。今回は、中小企業の「人材採用」の現状を紹介します。

採用にコストをかけられない中小企業

競争激化に何とか策を講じなければ人材は採用できません。しかし、中小企業は大手のように人材採用に多額の投資をすることができないところがほとんどです。

 

一般的に採用にかかるコストは、広告費の他、入社案内資料の製作やホームページ作成、DM発送費、アウトソーシング費、発送費などがあります。リクナビ、マイナビのように新卒採用サイトに掲載するには数十万円単位、合同企業説明会にブースを出すのにも資金が必要です。

 

エリアや出展ブースの面積、装飾の規模などによってかかる費用はまちまちですが、一日の出展費用は少なくとも数十万円、大企業が出展するような大規模なブースであれば500万円以上ものコストがかかります。

 

マイナビが発表した「2016年卒マイナビ企業新卒内定状況調査」によると、企業1社あたりの年間採用費の平均は556万円、新卒採用一人あたりにかかるコストは45.9万円という結果が出ています。

 

仮にそれだけのコストをかけて採用活動をしても、ベンチャー企業や流行の業種、大手企業に埋もれて地方の地味な会社によい人材は集まりません。応募があったとしても、力を発揮してくれそうな能力を持った人は来ない。これでは、採用費というムダなコストを垂れ流しているのと同じなのです。

 

[図表1]大学生への就職意識調査

追い打ちをかける「新卒社員の離職率」の高さ

さらに追い打ちをかけているのが、新卒社員の離職率の高さです。2015年版の中小企業白書によると、中小企業・小規模企業の新卒社員の3年以内の離職率は44.2%という結果が出ています。

 

[図表2]中小企業・小規模事業者における就業者の離職率(3年目)

 

人材不足で悩む企業にとって、人材を確保するために、まず採用そのものにコストがかかり、そのうえ、新人が一人前に育つまでには少なくとも2〜3年はかかります。しかも、ようやく仕事を覚えたころに退職してしまえば新卒に投資したコストは全くムダになってしまう。それでも、どうしようもないのでまた募集する。

 

結果として採用と離職を繰り返し、コストだけがかさんでいくという悪循環に陥っているのです。

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    本連載は、2016年11月12日刊行の書籍『事業拡大を実現する中小企業のための「長期インターン」活用戦略』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    佐藤 均

    幻冬舎メディアコンサルティング

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