ここ20年で特に有力な投資対象に成長したスリランカの不動産。本連載では、急速に進む都市化と観光産業の発展が、不動産市況にどのような影響を与えるかをお伝えします。第1回目は、スリランカにおける不動産投資の位置づけがテーマです。

「結婚の枠組み」すら左右する不動産の存在

スリランカで初めて投資の対象となったのは不動産だろう。不動産は財産を増やし、また、譲渡時に重要な役割をこれまで果たしてきた。その上、スリランカでは結婚の枠組みでさえ、不動産が決定づけてきた。

 

キャンディ王国時代のスリランカでは、ディーガ婚・ビンナ婚と2種類の婚姻制度が定められていた。両者の一番の違いは相続権の扱いだ。ディーガ婚では花嫁の兄弟の承認が得られない限り、花嫁は実の父親の財産を相続する権利を失う。一方のビンナ婚の場合では、花嫁は相続権を放棄する必要がない。

 

もちろん歴史的な慣習が良い投資判断をするための基盤となるわけではない。ただスリランカにおいて資産の一つとしての不動産が、これまでどういう役割を演じてきたのかを理解することは参考になるはずだ。

株式投資と債券投資の間に位置する不動産投資

スリランカの不動産データは不透明だと評判が悪い。現時点で、公的な不動産価格情報で一貫性のあるものは存在しない。僅かに点在するデータも透明性に欠けており、それらの情報は実際の数値を示すというよりも、市場動向を伝えるぐらいではあるが、無いよりはマシだと考えるしかない。

 

スリランカ中央銀行は2010年に全国の地価を公示しているが、残念ながらそれが最後となっている。ありがたいことにLankaPropertyWeb社が2011年より地価の記録を開始している。それら2つのデータによれば、コロンボの不動産市場は国際市場と同じく、株式市場よりは少ないが債券市場よりは多くの収益を生んでいることが分かる。このことは同時に、不動産市場のリスクも、株式市場よりは低く債券市場よりは高いことを示している。

 

株式市場は莫大な利益をもたらすかもしれないが、その分ボラティリティも高い。投資の成否はエントリとイグジットのタイミング次第なので、ボラティリティが高いほどリスクは高くなる。その一方で、不動産は安定して一定の収益を生むものだ。言い換えれば、不動産は瞬時に利益を生み出すことは出来ないが、比較的安全かつ安定的に利益を生む投資先なのだ。

 

次回は、スリランカの不動産投資を活発化させるREIT導入に向けた動きについてご説明します。

この連載は、GTACが提携するスリランカのメディア「ECHELON」が2015年10月に掲載した記事「Sri Lanka’s economic transformation and real estate」を、翻訳・編集したものです。

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