今回は、銀行の格付け対策において、「定性要因」は無視してよい理由を見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

きわめて主観的な要素が入る「定性要因」

銀行格付け(スコアリング)には、
定量要因と定性要因の、2つの評価要素があります。
定量要因は、決算書をベースにした客観的評価です。
定性要因は、銀行サイドによる主観的評価です。
定量要因は129点、定性要因は71点、
合計で200点満点です。

 

“定性要因には、どう対策すればいいんですか?”
と聞かれることがあります。
その答えは、“ほうっておけばいい。”です。
まず、定性要因の内容を見てください。


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これら11項目について、各担当者が評価します。
市場動向や市場規模などは、分析データの有無次第で、評価できます。
しかし、経営者、従業員のモラル、競争力など、
きわめて主観的な要素がいくつもあります。

狂いなく「主観的」に評価できる人材はいない!?

そもそも、
主観的評価に頼ることで、不良債権が続発したのです。
現状の格付け(スコアリング)の目的は、
不良債権を出さない融資をすること、にあったわけです。
なのに、主観的評価を加えたのでは、意味がありません。

 

それに、定量要因という、客観的評価の導入により、
銀行マンの目利き力は、どんどん衰えました。
上記項目を、狂いなく主観的に評価できる人材は、
ほとんどいなくなったのです。
しかも、各銀行マンが評価するのですから、時間を費やします。
コストがかかるわけです。
コストをかけてまで、信ぴょう性の低い評価をすることはない、
という方向に、流れていったのです。
加えて、主観評価を加えて不良債権がでたら、
“この会社に融資をする評価は誰がしたんだ!”
となり、評価者は責任を問われます。
銀行員はみんな、責任を持ちたくないのです。

 

つまりは、
定性要因など評価せず、定量要因で判断すればいい、
ということです。
不良債権を出さないことが目的なら、
定量要因の評価で、ほぼ間違いはない、
ということになっていったのです。

 

だから、定性要因への対策は、
“ほうっておけばいい。”
ということに、なるのです。

 

銀行は、金融庁の方針で動きます。
金融庁サマサマ病なのです。
なので現状は、定性要因はかまわなくても、大丈夫なのです。

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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