今回は、銀行の優越的地位の濫用として金融庁が禁じている過当な「歩積両建預金」の要求について見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

「お貸しするので、定期預金にしてもらえませんか?」

金融庁による、銀行監督上の評価項目には、たくさんの項目が並んでいます。

 

で、どの項目も、重要性に「差」はない、ということを、前回で申し上げました。

 

なかでも、中小企業に多く関わるのが、「正常な取引慣行に反する、不適切な取引の発生の防止」(銀行監督上の評価項目Ⅱ―3-1-6-2)というものです。

 

くわしくは、こちらから。

 

たくさんあるので、ひとつずつ、見てゆきます。

 

(1)過当な歩積両建預金等の受入れ

 

歩積両建は、(ぶづみりょうだて)と読みます。


“お貸ししますので、定期預金にしておいてもらえませんか?”
というものです。

 

ありませんか?

金融庁の監督指針では禁じられているが…

例えば、こんな場合があります。

 

3千万円の融資をお願いしたとして、“この際、6千万円お貸ししますので、3千万円は定期にしてもらえませんか?”などと持ちかけてきたりします。

 

要は、3千万円は、銀行のおさえです。で、しっかり金利は取ります。

 

借りる側は、借りたいわけで、すぐに、“わかりました”と返事をしてしまいます。

 

あるいは、“オレは、そんなに貸すほど、銀行から信頼されているのか”と、勘違いしてしまいます。信頼していないから、それだけ貸すのです。銀行にあるお金の一部が定期となり、名義が変わるだけで、そのお金の支配権は、銀行に握られているのです。


しかも、銀行にとったら、自分の手元にありながら、金利をいただけるわけです。

 

子会社で借りたいときに、“子会社にお貸ししますから、親会社で借りて定期にしてくれませんか?”という場合もあります。これも同じ事です。

 

これら、歩積両建預金は、不適切な取引として、発生しないようにしなければならないのです。それは、“優越的な地位の濫用”にあたるとしているのです。

 

評価項目の文書には、“過当な歩積両建預金等”とあります。

 

過去に契約してしまった、歩積両建による定期預金があり、解約を申し込んでも応じないようなら、“確か、金融庁の監督指針では、過当な歩積両建預金は禁じられているはずですが・・・、〇千万円は過当にあたらないのかどうか、金融庁に問い合わせてみます。”


と、言ってみて下さい。情勢がガラリと変わりますよ。

 

経営者の皆さんには知っておいて欲しい、重要な事実なのです。

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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