両手仲介自体は「正しい商取引」といえるが・・・
これまでお話しした「双方代理」や「囲い込み」の問題も、大手の業者と無関係ではありません。前に少し触れた「週刊ダイヤモンド」が2015年4月18日号で報じた記事を、次に引用させてもらいます。
「あのデータが表に出たら不動産業界は大変なことになるだろう」
ある不動産会社の幹部がそうささやくデータが、一部の業界関係者の間に出回り始めている。不動産仲介各社による「物件の囲い込み」と呼ばれる不正行為の実態を調査したレポートだ。業界でまかり通る不動産取引の悪弊を憂いた有志関係者がまとめたとみられる。このレポート、結論からいえば、大手各社の信じ難い不正の数々が克明に記録されている。
(中略)両手仲介自体は正しい商取引である。だが、問題なのは、売主と媒介契約を結んでいる不動産仲介会社が、他社から物件照会があっても「すでに他の客と交渉中」などと偽って物件を渡さず、両手取引を狙うケースである。これが物件の囲い込みと呼ばれる行為だ。不動産仲介会社にとっては、売り主の物件がなかなか売れなくても自社の在庫コストが増えるわけではない。それ故、囲い込みで時間をかけてでも両手仲介を行った方がもうけは大きい。
一方で割を食うのは、売り主である。他社が抱える買主に対して売れたはずの機会を逃し、いつまでも売れず、結局、値下げせざるを得ないケースも少なくない。そもそも、物件売却の媒介契約をした不動産仲介会社が、故意に情報を隠したり独占することは宅地建物取引業法で禁じられており、「発覚した場合は改善の指示処分を下す。それにも従わない場合、業務停止処分もあり得る」(国土交通省不動産業課)。にもかかわらず国土交通省は囲い込みの実態調査を積極的に行ってはおらず、それ故、過去に発覚した事例は「把握できる限りにおいては一件もない」(同)。
売主に不利益になる行為が日常茶飯事!?
この記事には参考資料として、「週刊住宅新聞」の調査結果からまとめた「主要各社の平均手数料率(2013年度)」という表も掲載されています(図表1参照)。
1位は住友不動産販売、取扱件数は3万5455件で平均手数料率は5・33%です。片手仲介なら3%以上にはなりませんから、ほとんどが両手仲介だという実態がこの数字からも明らかです。2位は三井不動産リアルティの5・32%、3位は大京グループの4・87%、4位は住友林業ホームサービスの4・50%、5位東急リバブルと大成有楽不動産販売グループの4・39%と続きます。
「双方代理」を認めている法律にも守られて、日本の不動産仲介業者は「双方代理を果たすこと」が基本的な営業目標になっているのは、このデータからも間違いないでしょう。とりわけ大手のように販売力がある方が、「双方代理」がしやすいのです。
【図表1】
現場では、この表を見るまでもなく、大手が双方代理を基本にしていることは誰もが知っています。大手仲介業者のなかには、業者に対して明言する担当者もいるからです。たとえば、私が知っている限りでも、超大手銀行系の業者、独立系不動産流通会社に物件の問い合わせをしたとき、「うち、両手しかやらないよ」と、はっきり言われたことがあります。大手の実態は全部これです。
繰り返しますが、「週刊ダイヤモンド」の記事にもある通り、それ自体は違法行為ではありません。しかし、双方代理を実現するために、売主にわからないところで不正が行われ、「囲い込み」によって売主に不利益になる行為が日常茶飯事になっているのは、前にも述べた通りです。
結局、それが「1、2、3のような業者本位の商売」の温床になっているという現実もありますから、私は「絶対に許されるべきことではない」と考えます。