税務調査官が「威圧・脅迫的」・・・適切な対応事例とは?

税務署による突然の「税務調査」には、誰しも不安を覚えます。本連載では、税理士法人鳥山会計代表・鳥山昌則氏の著書、『マル秘・実録 税務署との交渉術』(現代書林)の中から一部を抜粋し、節税・相続対策・不動産投資などに関する、税務署との交渉・対応術を具体例を用いて紹介します。

威圧的な調査官に「恐怖」を感じた相談者・・・

ある土曜日、一本の電話がありました。地方都市で歯科医をしている方からでした。内容は、税務調査にあっているが、3人の調査官(上席は係長クラスの40代、調査官は主任クラスの30代)の態度が大変威圧的で恐怖を感じているというものでした。ホームページを見て、電話をかけてきたのです。

 

具体的には、3人の調査官が突然やって来て(無予告の現況調査)、有無を言わさず診療室に入り、患者の資料を見せろと言い、2階の寝室にまで入ってパソコンを見て、大きな声で問題点を指摘するなどされたということで、相談者は「このやり方に問題はないのか」と憤っていました。

 

私は、調査に問題はあると思いましたが、あまりに遠方なので地元の税理士さんに対応してもらうのがいいのではと、やんわりとお断りしました。次に調査官がやって来るのは、翌週の火曜日だということで、日程も差し迫っていました。翌日の日曜日、再度、この方から電話がありました。

 

「姉や友人に相談したら、税務署に盾突くともっとひどい目に遭わされると言われた。しかし、どうしても腹が立ってしょうがない」というのです。相談者は「恐怖心もある」と訴えました。調査官の一人が、簡単には知りえないことで自身にとっては差別ともとれる発言をしたというのです。調査官が、納税者本人に話を聞く前に、市役所などで調べたのでしょう。

 

しかし、これには二重の問題があります(税務署が行う税務調査はすべて任意調査。納税者の協力なしに成立しない)。

 

①差別的発言で納税者を威圧し、税務調査を強迫的に行い、税務署に有利にしようとしたこと。

 

②税務署員が持つ質問検査権によって、必要に応じ市役所などの第三者から情報収集ができると規定されている。しかし納税者に接する前に調べることは、いつの時点で必要になったのかという問題が生じ、違法の疑いがある。

 

このまま放っておいては、相談者の人権が踏みにじられ、心に傷を残すことになりかねません。私は相談者の依頼に応じる決心をしました。月曜日、5時起きをして新幹線に飛び乗り、午前8時過ぎ、ご当地に到着。依頼者にはあらかじめ、今回の税務調査の問題点を文書にまとめてもらっておきました。

統括官が指摘した2つの問題点への「回答」とは?

駅の近くの喫茶店で簡単な打ち合わせをし、「税務代理権限証書」をいただきました。さあ、税務署へ電話です。担当の統括官(一般の会社でいえば課長級の現場の長で50代)に趣旨を話し、今から打ち合わせに行くと伝えました。幸い、税務署は駅から徒歩でも行ける場所。税務署では、統括官と3人の担当者のうち1人が対応に出てきました。依頼者は声を震わせ、文書にまとめてきた話をしました。文書の最後には、対応によっては憲法16条に基づく「請願書」も検討すると付け加えておきました。

 

これに対して、統括官は謝ってくれました。不快な思いをさせたことに対してです。しかし、担当の2人が不在で真相がわからないことを理由に、私と依頼者の目的である税務調査の終了と全面的な謝罪は難しいということになりました。とりあえず、翌日の調査はしないということと、こちらの要求をしっかりと書いた文書を置いて署を後にしました。

 

その後、統括官から私に電話があり、税務署としては違法なことはしていないし、一般的な税務調査であり、もう1日どうしても調査日程をとってほしいということでした。これを受け入れては、私の名折れです。断固拒否をしたところ、統括官が問題点を2つ指摘してきました。

 

①現金売上の漏れが少しあった。もうこれ以上ないかどうか。

 

②娘さんに出していたアルバイト料について、専従者給与の届け出が出ていないので否認する。

 

私はこの2点について、依頼者からヒアリングを済ませていたので、即座に答えました。①は、これ以上はない(5000円くらいの売上計上漏れです)。②は、娘さんが東京に住んでいて生計は別のため、アルバイト料として認められるべきもの。しかも娘さんはこの分を申告している。それを証明するためなら、半日程度、税務署において(依頼者宅ではなく)打ち合わせをすることを承諾する。

 

統括官もこれに納得し、1週間くらい後に2人で行きました。一通り書類を見せて説明したところ、今回は5000円の売上計上漏れのみで終了するということに。そして、問題発言をした担当上席が統括官と一緒にきっちりと謝ってくれました。苦虫を噛みつぶしたような顔でしたが、依頼者も私も心がスッキリと晴れました。ちなみに、今回の出張日当は12万円でした。

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連載「闘う税理士」が伝授する税務署との交渉術

税理士法人鳥山会計 代表 税理士 行政書士 宅地宅建取引士
不動産投資コンサルタント

1959年2月、福井県勝山市に生まれる。79年、福井県立短期大学経営学科を卒業し、すぐに上京、お蕎麦屋さんで住み込みのアルバイトをしながら専門学校に通い、22歳で税理士5科目(簿記論、財務諸表論、法人税法、所得税法、相続税法)合格。27歳で税理士登録、現在、税理士法人鳥山会計代表。実践経営者・税理士として多くの中小零細企業の経営と税務の応援を行い、鋭い指摘と親身な指導には定評がある。賃貸不動産多数棟所有。自社管理によるノウハウと節税により、不動産専門税理士としての地位を不動のものにしている。

著者紹介

マル秘・実録 税務署との交渉術

マル秘・実録 税務署との交渉術

鳥山 昌則

現代書林

著者は「闘う税理士」として知られています。闘う相手は誰か? もちろん、税務署です。 闘うといっても、税務署を相手に子どもじみたケンカをする訳ではありません。事実認定をしっかり主張し、税務署に認めてもらうための交渉…

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