中国企業との交渉――押さえておくべき10のポイント

今回は、中国企業と「円滑な交渉」を実現するための方法を、10のポイントにまとめて見ていきます。※本連載は、世界4カ国で20年もの経営経験をもつ平沢健一氏の著書『アジアビジネス成功への道』(産業能率大学出版部)の中から一部を抜粋し、中国・インドでの交渉術や、勝ち抜くためのノウハウを紹介します。

肝要なのは「違いを知り、違いを乗り越える」精神

今回は、実際に中国人と交渉する際の留意点を10のポイントとしてまとめてみました。

 

①交渉は運動競技に似ていますからゲームと思い、妥協を楽しみます。交渉結果に左右されない「良い関係づくり」と思いましょう。

 

②人と問題を切り離して考えることが大切です。交渉者も人間であり、友好関係と実質問題を切り離して考えます。また日本では、権限のない人と交渉しても権限のある人に内容が伝わりますが、中国ではまず伝わらないと思いましょう。だからこそ、素早く権限のある人を見つけて交渉するとよいのです。

 

③相手の背後に目を向け、立場ではなく利害を徹底的に追求し、そこに焦点を合わせるとよいでしょう。論争だけでは関係を悪くし、解決が困難になります。立案と決定を分離し、互いの利益を探します。複雑な交渉ほど、慎重な利害分析が必要です。ただ、双方がwin-winの関係になれることはまれだと思った方がよいでしょう。

 

④クセ球を時々投げてきますから、自分も用意はしておくことが必要です。ただ基本的にはやり返してはいけません。違うテーマの時にやった方が良いのです。これは高等戦術だけに、感情を抑制した円熟味が問われます。

 

⑤中国では、強い者が勝ち、勝った方が正しいという考えが主流です。価値に貪欲な者が勝つのです。そのために、ありとあらゆる要求をしてきます。「ほどほどで良い」は通用しないと思い、日本と違って「出る杭は打たれてよい」と思って交渉に臨むことが大切です。

 

⑥客観的な基準を明らかにし、事実について証拠を添えて説明します。勝手に決めようとすると高くついてしまいますから要注意です。

 

⑦交渉の場面の演習を行っておくと効果的です。また交渉の最後は、前向きの発言で終えるようにします。この演習もやっておくとよいでしょう。

 

⑧交渉力に自信がなかったら、信頼できる中国人に任せましょう。

 

⑨中国人は自国で重要な交渉をしたがりますが、できるだけホーム(日本)で行い、アウェイ(中国)での交渉は避けた方がよいでしょう。

 

⑩米国流の「原則立脚型交渉術」は中国には合いません。「立場駆け引き型交渉」が多いことを知りましょう。メンツ、関係、道理から関心へのステップ、歴史認識や原則、価値観が全く違うことをしっかり事前に学習しておくことが大切です。

 

中国政府や行政の窓口は立場上、概してウソつきやいい加減な人も多いのですが、一般の中国人は実に親切で義理堅く、良い人がたくさんいます。「違いを知り、違いを乗り越える」精神が肝要です。

日本人の「遠慮がちな言動」は立場を悪くすることも…

中国人はもろに原色で自分たちを表現します。伝統的に異議を唱え、怒りをぶつけますし、自分が悪くても謝りません。納得のいかないことは譲ろうとしません。日本人のように品位や惻隠の情などは重視しないと思った方がよいでしょう。

 

中国語で「我行我素(ウォシンウォスー)」という言葉がありますが、他人が何を言おうが「自分のやり方で」が鉄則だという意味です。

 

また「随心所欲(スイシンスオイ)」すなわち「すべてが自分の思い通り、心の欲するままに」が中心的な考えですから、それぞれが勝手に事を行い、主張します。世間体など全く気にしません。

 

一方、日本人は遠慮深く、物事を謙虚に語りたがる傾向が断然強いと言えます。世界で20年余り様々な国の人たちとビジネスをやって感じることは、国際ビジネスの「切った、張った」の最前線ではこうした言動は誤解され、自分の立場を極端に悪くします。

 

卑屈に語ることはやめ、我々日本人はもっと誇りを持って21世紀のグローバルビジネスに対処していかねばなりません。

 

世界から日本を見ると、これほど素晴らしい国はありません。ただ、これまでのように豊穣に酔っていてはいけません。20年近い閉塞感が続く日本は今こそこの事実を知って、世界に大きく飛び出していかねばならないと思います。

 

これからは「自虐性を卒業して自信を取り戻した日本と、世界を知って謙虚さを身につけた中国」になってほしいものです。

 

アジアや世界の良識ある人たちは、再びよみがえる日本と勢いを増す中国に大きな期待を抱いていますし、信頼できる日本人や中国人を待っています。いつまでも過去の歴史を引きずって、ケンカばかりしている時ではありません。

本連載は、2016年6月30日刊行の書籍『アジアビジネス成功への道』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

連載ビジネスに役立つ「アジア流交渉術」〜中国・インド編〜

株式会社トランスエージェント 会長
G&C(グローバル&チャイナ)ビジネスコンサルタント 代表
アジア立志塾 代表 

早稲田大学第一商学部卒業。15年間日本ビクターで国内営業、本社国内課長後、1982〜87年米国ニューヨーク駐在、テレビ初代マーケティング部長、ニューヨーク営業所長。88〜96年イタリアミラノ駐在、JVCイタリア初代社長。96〜98年英国ロンドン駐在、JVCヨーロッパ副社長、欧州副本部長。98〜2002年中国北京・上海に駐在、日本ビクター理事、JVC中国社長、会長。この間4ヵ国20年間海外現地法人経営。56ヵ国をビジネスで訪問。
現在、株式会社トランスエージェント会長、G&C(グローバル&チャイナ)ビジネスコンサルタント代表、(一財)海外職業訓練協会理事、(株)イチビキ特別顧問、NPO法人日本交渉協会特別顧問、北京金杜法律事務所顧問、日中関係学会理事、アジア立志塾代表。

著者紹介

アジアビジネス成功への道

アジアビジネス成功への道

平沢 健一

産業能率大学出版部

アジアの14ヵ国で成功を収めた14人の経営者と、世界4カ国20年の経営経験をもつ筆者が、グローバルビジネスの中心となってきたアジアビジネスでの成功の秘訣を語る。アジアビジネスでの苦労や成功体験はもちろん、アジア各国で…

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