子どもの考える力を鍛える――「天声人語」を活用した勉強法

前回は、子どもに音読の習慣をつけさせるべき理由を説明しました。今回は、子どもの考える力を鍛える「天声人語」を活用した勉強法について見ていきます。

内容を質問して子どもの「意見」を引き出す

音読によって基本的な国語の力を養ったら、次に挑戦させたいのが大意要約です。少しまとまった文章を読んで、その意味をまとめる練習です。

 

教材として最適なのが、朝日新聞の「天声人語」に代表される、新聞朝刊の一面の下にあるコラムです。各紙ごとに文字数が決まっていて、「天声人語」なら603文字で書かれています。これを約半分の300字程度にまとめるのです。

 

大意要約も、子どものために少し時間を割いてあげれば、家庭で手軽にできて、確実に成果の出る頭の訓練となります。もちろん国語の力も間違いなく上がります。

 

具体的なやり方は、まず「天声人語」をしっかりと読みます。次に書かれていた内容を元に、子どもに質問してあげてください。例えば「どんなことが書いてあったの?」「読んでみて、どう思った?」などと子どもの意見を引き出します。

 

その意見に対して「お母さんは、こう思ったよ」とか「こういうふうにも考えられるんじゃないかな」といった感じで、反論ではなく、別の視点からの意見を出してあげます。これが子どもの考えを深めるための刺激となります。

 

自分の考えとは異なる捉え方や意見を聞けば、素直な子どもは「あれ、どうしてだろう?」とか「なぜ、そんなふうに思うのかな?」と考えます。親子間での意見交換は、考える力を養うための訓練として最適です。

 

この作業を繰り返すことで、子どもは徐々に、自分なりのこだわりや疑問を持って文章を読むようになります。書かれている内容を、いったんはまず受け入れる。その後で受け入れたテキストに対して、子どもなりに批判的に読み込めるようになるのです。こうした訓練を繰り返すことで、テキストを読んで考えることが習慣化されます。

 

テキストと主体的に向かい合うようになれば、深く考えずに読んでいた時には、頭を素通りしていた文章の中身が、しっかりと頭の中に残るようになります。文章の中で使われている用語に対しても興味が湧くでしょう。

 

そこでひと言「どうして、この文章を書いた人は、この言葉を選んだのかな? 他にも似たような言葉があるのにね」と疑問を投げかけてあげると、子どもの頭はさらに動き出します。

自分の言葉で文章をまとめる訓練も行う

「なぜ?」と「どうして?」が頭を動かすためのマジックワードであることは、国語でも同じです。使われている用語に対する興味が湧いてきたら、次は細かな表現にも関心を持たせてあげてください。例えば「同じことを、違う言い方で表現したらどうなるかな」と尋ねてあげるのです。

 

そうした練習をした上で大意要約に取り組みます。大意要約は、文章を読んで何が書かれていたのかを「自分の言葉」でまとめる訓練です。要約することで内容に対する理解が深まります。

 

文章の骨格を見つける別の練習法もあります。元の文字数に対して半分にまとめる練習をしたら、次は3分の1にまとめてみる。さらに100字にまとめてみる。一行だけを抜き取るなら、どの文章になるかを考えさせる。

 

抜き取るだけでは意味がわかりにくいなら、どのような文章にすれば、言いたいことが伝わるかを考えさせる。いずれも文章を材料とした、格好の考える訓練になります。

 

題材として「天声人語」などの新聞コラムを使う理由は、書かれている内容によって、世の中の動きを知ることができるからです。

 

季節や世相の移り変わり、大きな事件についての捉え方などをタイムリーに、しかも限られた文字数の中でコンパクトに文章化されているのが、新聞のコラムです。コラムを元にして親子で話し合う機会を持つことで、社会常識や季節感に対する子どもの理解が深まります。

 

コラムを書いているのは、各新聞社の中でも、最もわかりやすい文章を書く人物です。内容が最重視される社説とは異なり、コラムは内容プラス読み易さが要求されます。

 

そのコラムを読み、子どもたちが普段暮らしている環境では、滅多に触れることのない話題に接する。読んだ内容を理解して、自分なりの言葉で文章を作る練習をする。これらはすべて頭を使うトレーニングになります。

 

筆者の塾では、この大意要約を家庭での毎週の課題としています。やってこなかった場合は、保護者に連絡を取り、教室に残して全文を書き写させます。今ではほぼ全員が、毎回必ずやってきています。その結果、国語の力はみんな、相当伸びました。これは家庭でも簡単にできる思考訓練ですから、ぜひとも取り入れていただきたいと思います。

 

塾の国語の授業では、算数同様に1時間かけて文章題1問に取り組みます。国語の授業も、もちろん考える授業です。子どもたちに最初に配るのは、中学校の入試問題の本文だけ、問題そのものは配りません。問題を解く授業をしているわけではないのです。

 

授業前には、小学校4年生クラスなら黒板に「言葉の意味は辞書が解決します」「文章の意味は何度も読むことで解決します」と大きく書いておきます。

 

やがて授業が始まると一段落ずつ、本文を読んでいきます。子どもたちに与える文章は、小学校4年生以下と5年生以上ではっきりと分けてあります。4年生以下に与える文章は、文章そのものに面白さがある、いわゆる「食いつきのいい」問題文です。

 

子どもたちが興味を持ちやすい内容を扱った問題であれば、小学校4年生のクラスでも最難関中学の問題文を読ませることもあります。レベルの高い学校の入試問題は、細部の言葉遣いまで精査するなど徹底的に吟味を尽くされているので、読んで面白い文章が採用されているケースが多いのです。

 

5年生以上になると、今度は読み切ることに重点を置き、あえて難解な文章を与えます。読んで面白いかどうかではなく、与えられた文章を読み込むことで考えを深めるのです。一読しただけではよくわからない文章、決して面白く読むことはできない文章に取り組むことで、文章を読んで考える力が養われていきます。

 

こうした訓練を積むことで、どんな文章を与えられても、その文章を考えながら読み、内容を的確に把握できるようになります。把握した内容を要約したり、内容に対して批判的に自分の考えを書けるようになったりします。こうして国語の勉強を通じて、考える力を養うことができるのです。

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連載わが子を東大・京大へ導く「思考教育」

関西教育企画株式会社 灘学習院  学院長

昭和42年に神戸市灘区に学習塾「灘学習院」を開校。開校以来、思考教育に特化した教育を実践している。自分の頭で考える子どもを育てるため独自の「思考教育」を確立。40年以上に及ぶ指導経験と独自のノウハウを蓄積し、現在は教師の研修指導にあたっている。大手学習塾のように受験を目標とした「詰め込み型」「暗記型」ではなく、考える力自体を伸ばす「思考型」の教育法を実践。

著者紹介

東大・京大に合格する 子どもの育て方

東大・京大に合格する 子どもの育て方

江藤 宏

幻冬舎メディアコンサルティング

「うちの子は勉強しているのに成績が上がらない」、「あの子は勉強しているように見えないのにいつも成績がいい」と感じたことはありませんか? 実はわかりやすい授業ほど、子どもの可能性を奪っているとしたら――。 40年にわ…

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