(※写真はイメージです/PIXTA)

いまや全国民の懸念事項ともいえる、年金受給額の問題。とくに自営業の方の場合は、満額受給でも毎月6万6,000円程度しかもらえません。受給繰り下げを頑張っても、増やせる金額はわずか…。自発的な対策が必要です。どのような方法があるか見ていきましょう。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

自営業者の公的年金は「1階部分」のみ

日本の年金制度は3階建だといわれています。1階部分は全員が加入する「国民年金」、2階部分はサラリーマン(男女を問わず、公務員等を含む。以下同様)だけが加入する「厚生年金」、3階部分は「私的年金」です。

 

自営業者は2階部分に加入できないため、老後に厚生年金が受け取れません。サラリーマンと比較して公的年金が大いに見劣りするのです。受け取れる年金は、年金保険料の払い漏れがない場合は毎月6万6,000円、夫婦2人で13万円強です。老後の生活資金としては十分とはいえませんね。

 

年金の受取開始時期を遅らせることによって毎月の受取金額を増やすことができるので、可能なら増やしたいですが、それでも老後資金として十分とはいえないでしょう。

若いときから老後資金をしっかり貯めよう

自営業者は、公的年金が見劣りするのみならず、退職金がありませんし、働けなくなった場合の保証もありません。浮き沈みの激しい仕事の場合には、最悪期を乗り切れるだけの貯えを持っておく必要もあるでしょう。したがって、若いときからしっかり貯金をしておく必要があるわけです。

 

自営業者も千差万別ですが、若手サラリーマンが会社への貢献より少ない給料しか受け取れないこととの比較で考えると、貯蓄する余裕がある人も多いのではないでしょうか。そして、貯蓄をする際には後述のiDeCoや小規模企業共済制度の活用が可能なので、前向きに検討しましょう。

自営業者なら「iDeCo」に大きなメリットあり

iDeCoというのは、政府が「貯蓄から投資へ」「貯蓄から資産形成へ」というスローガンのもとで設けた優遇税制です。拠出額が所得控除になる、投資による配当や値上がり益等々が非課税になる、といった大きなメリットが見込めるので、是非前向きに検討しましょう。

 

株式投資は怖い、という人でもiDeCoは使えます。配当や値上がり益等が非課税になる、というメリットは享受できませんが、所得控除が受けられるだけでも大きなメリットだといえるでしょう。

 

iDeCoは、大変有利な制度であるため、拠出限度額が設けられているわけですが、その限度額が自営業者はサラリーマンより大きいのです。「公的年金が見劣りする分、自分で貯えなさい」という政府のアドバイスが聞こえて来そうです。

 

もっとも、iDeCoは60歳まで引き出せないことには留意が必要です。意思が弱くて老後資金を貯められない人のために政府が決めたことなのでしょう。政府の親心なのでしょうが、浮き沈みの激しい仕事をしている自営業者は、「あと100万円あれば倒産を免れたのに」といった眼に遭う可能性もありますから、その点はしっかり検討しましょう。

「小規模企業共済制度」の活用等も選択肢

個人事業主は、小規模企業共済制度を活用することもできます。個人事業をやめた時などに積み立てた生活資金を受け取れるように、毎月7万円を上限として積み立てを行なうものです。掛け金が所得控除になるほか、受け取る共済金についても税法上の優遇措置が受けられます。

 

iDeCoと異なり、60歳まで引き出せないといった制約はありませんから、浮き沈みの激しい仕事をしている人でも安心して加入できると思います。

自営業者、サラリーマンより有利な点も多数

上記のように、自営業者は、公的年金が見劣りするのみならず、退職金がありませんし、働けなくなった場合の保証もありません。しかし、自営業者のほうがサラリーマンより恵まれている点も多数あります。iDeCoの拠出枠が大きいこと、小規模企業共済制度が使えること、などもありますが、何と言っても定年がないことは大きなメリットです。

 

サラリーマンは定年になると収入が激減するのですが、自営業者は元気な間はいつまででも現役として稼ぎ続けることができるのですから、大いに稼ぎましょう。

「法人成り」すれば、厚生年金への加入も可能に!

自営業者の年金が見劣りする、ということが気になるならば、法人成りという選択肢も要検討です。自分で会社を作って社長になって、厚生年金に加入するのです。自分が社長なので、定年を気にせず元気な間は現役でいられますから、サラリーマンと自営業者のいいとこどりですね。

 

もっとも、法人税を課せられたり、厚生年金保険料の企業負担が必要になったりするので、慎重な検討が必要です。税理士やファイナンシャルプランナーなどとよく相談して決めるとよいでしょう。

 

裏の手としては「配偶者が働きに出て、厚生年金に加入する」という選択肢も要検討です。配偶者が老後に受け取る年金が増えるので老後の生活が安定しますし、自営業者の仕事がうまく行かずに収入が激減した場合には「サラリーマンの専業主婦(主夫)」として扱われるため、自分が年金保険料を払わずにすむかもしれないからです。

 

本稿は以上ですが、資産運用等々は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。

 

 

塚崎 公義
経済評論家

 

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