(※写真はイメージです/PIXTA)

都市部への人口集中と高齢化により、地方にある「実家」の“空き家化”が進む昨今。悩ましい問題ですが、「地方の実家を相続して処理に困った場合、唯一の対処法がある」と、不動産事業プロデューサーの牧野知弘氏は言います。牧野氏の著書『負動産地獄 その相続は重荷です』より、詳しく見ていきましょう。

どうにもならない「地方の実家」

日本国内では戦後から1975年頃までにかけて地方圏から都市部への大量の人口移動が生じました。これを示したのが[図表]です。

 

出所:総務省「住民基本台帳人口移動報告」『負動産地獄 その相続は重荷です』(文藝春秋)より抜粋
[図表]三大都市圏と地方圏の人口移動 出所:総務省「住民基本台帳人口移動報告」
『負動産地獄 その相続は重荷です』(文藝春秋)より抜粋

 

どのくらい移動していたのかと言えば、60年代から70年では毎年40万人から60万人もの人たちが、地方から三大都市圏(東京・大阪・名古屋)などに流入していました。これは地方からみれば、毎年大量の働き手を、東京を中心とする大都市に供給し続けてきたと言い換えることができます。

 

現在はどのくらいかといえば、コロナ禍前の2018年のデータでは12万人ほどに縮小しています。地方では人口減少が顕著になり、住民の高齢化が進む中、人の再生産が叶わず、三大都市圏への人の拠出という役割はすでに終了しつつあります。

 

さて1975年くらいまでに都市部にやってきた多くの若者たちは、都市部の学校を出て会社に勤める、あるいは地方の学校を卒業してから都市部にやってきて就職しました。彼らは故郷に戻ることはなく、家族をもって都市部郊外に家を買い求め、親が住む地方の実家に、盆や暮れに帰り、地元の人たちや親戚との旧交を温めていました。

 

しかし、彼らが都市部に出てきてからすでに50年から60年という時が経過しています。彼らの親の多くは亡くなり、相続した地方の実家はその多くが空き家となっています。空き家は全国で848万戸に増加していますが、空き家問題の最初の課題が、この地方に残された親の実家でした。私は、これを「第一世代空き家」と呼んでいます。

 

ちなみにこの間に大都市に出てきて都市部郊外に建てた家が、次の世代に引き継がれず、今後大量に空き家化していくのが、大都市圏郊外で起こる「第二世代空き家」問題です。

 

さて、この第一世代空き家です。自分自身が育った家は愛着こそあれ、すでに都市部で家を持ち、家族を育ててきた人たちにとって、故郷は遠きにありて想うだけの存在になっています。家としての使い道がなく、さりとて売り払うことはご先祖様に申し訳ない、と思う一方、実は地元に流通マーケットはすでになく、売ろうにも売れないものとなっているのが実態です。もちろん貸す相手もいません。時たま故郷に戻って通風、通水、掃除などをしますが、どうにも未来が見通せない家となっています。

 

地方ですから毎年課せられる固定資産税はそれほどの負担ではありませんが、家の劣化は否応なく進みます。地方の家は広く、大きく、その維持管理は、税金は別として大きな負担となります。そしてこれから問題をさらに深刻にするのが、使い道のなくなった地方の実家をそのままにしていると、もう一世代先、つまり孫世代に相続されていくということです。孫の代ともなれば、祖父母のいた地方の家にそもそも愛着はありません。ただ先祖代々の家という肩書だけが残され、その継承を迫られることになります。

 

孫の代にとっては地方の実家(というよりも元実家とでも言いましょうか)はどうにも扱いに困った存在になってきます。せめて親の代で始末しておかないと、すでに地元での人間関係もない中で、この家を相続するメリットは何もありません。

 

地方でもある程度の規模がある、立地が良い、など条件が整えばアパートや賃貸マンションを建設する、更地にして売却するなどの活用方法もありますが、人口減少、高齢化が続く多くの地方では、住宅としての役割を終えた不動産の扱いはなかなか困難なものとなっています。

 

よく地方の実家を相続して、なんとか活用方法を見出そうとして行動を始める人がいますが、注意する必要があります。私の知り合いの事例です。

 

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※本連載は、牧野知弘氏の書籍『負動産地獄 その相続は重荷です』(文藝春秋)より一部を抜粋・再編集したものです。

負動産地獄 その相続は重荷です

負動産地獄 その相続は重荷です

牧野 知弘

文藝春秋

資産を巡るバトルでも相続税対策でもない。 親が遺した「いらない不動産」に悩まされる新・相続問題が多発! 戦後三世代が経過していく中、不動産に対する価値観が激変。 これまでは相続財産の中でも価値が高いはずだった…

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